これは恋です
 シリーズ…りぼんマスコットコミックス クッキー
 著者…遊知やよみ
 出版社…集英社
 巻数…既刊5巻
 発売年…2008年〜
 ★現在Cookieにて好評連載中!
 参考リンク…集英社BOOKNAVI




■ ストーリー ■
 高校教諭の綾井剣は、受け持ちクラスの生徒である遠藤伽良を苦手に感じていた。伽良を目の前にすると胸が苦しく動悸がするという。同僚の辺名先生に相談したところ、「それは恋だ」と指摘される。最初は戸惑っていたが、伽良と資料室に閉じ込められた事件をきっかけにしてその気持ちを恋だと認める。だが、相手は生徒。教師として懸命に自制するが…


■ 総評 ■  ★★★★☆

 多くの人が感じていると思いますが、生徒ではなく先生主役・目線というのが新鮮。それだけでもまず面白いです。女性向け漫画に男が主人公というのは感情移入がしずらいというのはあたりまえですが、教師と生徒、だれでも理解できるようなキャラクターを主役に据えていること、主人公・綾井先生の優しいキャラクター、それをカバーする脇役、キャラクターの役割がしっかりなされていることもあり、女性読者に限らず男性読者にも愛される作品なんじゃないかなと思います。

 綾井先生と伽良の絶妙すぎる距離、作品の空気感、ストーリー、どれをとっても感心する出来で、綾井先生と伽良の恋の進展にますます目が離せないでいます。


■ 登場人物 ■
 
綾井 剣
 高校教諭。愛称は「綾」、「綾ちゃん」
 
遠藤伽良
 綾井の受け持ちクラスの生徒。
 
辺名
 綾の同僚。生徒からの嫌われ者。
 
花巻菜々子
 美術教師。綾のことが好きだった。


※ここより下はネタバレとなっています。了承したうえでお読みください。


 1巻  2008年9月12日 発売

 [ 第1回 ]

 生徒が先生を好きになるのではなくて、教師が生徒に恋心を抱いてしまうという、定番の逆パターンなところがまず面白いですね。胃が痛くなって気持ち悪くって動悸がする。ある特定の生徒に対してそれが苦手意識だと思っていたら、実は恋の症状だったという、物語の入り口も相手にだんだん惹かれていくという定番の状況とは少し違うところもまた良いです。

 そんなわけで生徒・遠藤伽良にどうやら恋をしてしまった綾ちゃん(綾井先生)ですが、苦手ではなく恋だと指摘されたときのリアクションが笑えました。生徒に恋してるだんて思わないからまさかの展開ですよね。



 [ 第2回 ]

 伽良に抱いているのは恋心だと自覚した綾ちゃんですが、生徒に特別な感情を持ってはいけないと自制心をコントロール。出席を取る時に伽良のところで止まってしまって生徒から気があるのかと言われて逆ギレするのが自制心を保つ必死さが出てるし、生徒に恋をしてはいけないと自分に言い聞かせるのが笑えます。
 寒い中自分を待っていてくれた伽良の手を触ってしまったことに激しく反省して、伽良が学校を休んだのは自分のせいではないかと考え込む綾ちゃんですが、そうではなくて、伽良のお母さんが再婚することがショックだったという事実。伽良を見つけ出してそばにいてあげる綾ちゃんって優しいですね。
 伽良から聞きたいことがあると言われて手を握ったことだと覚悟したら、約束していた借り物はいつも持ってきてくれるのか、という綾ちゃんまた肩透かし。ホッとしたと思ったら、手を握る=伽良の中では兄弟にしてあげる行動という、思いすごしに綾ちゃんはある意味安心したかもだけど、読者から見れば笑っちゃうオチでした。

 伽良の母親の再婚相手は、なんと綾ちゃんが住むマンションの大家さん。そして、大家さんちに伽良が引っ越してきます。二度と伽良に変な態度はとらないと決めた綾ちゃんだけど、綾ちゃんの思いに反して伽良が近づいてくるので、これから綾ちゃん苦しめられることになりそう。「神様はオレを地獄に堕とうそうとしているのか…?」本当は恋だったら幸せのはずなんだけど、立場上そういうわけにもいかずガマンしているところで「地獄」という表現が、綾ちゃんの苦しい立場を表していますね。



 [ 第3回 ]

 綾ちゃんと伽良の関係を進行させながら、綾ちゃんの同僚・辺名先生をピックアップ。生徒から気持ち悪がられて誰も寄りつこうとしない。目つきがイヤらしいとか、まちがいなく異常だと断言され変態扱いです。
 辺名先生の領域である理科準備室は生徒どころから教師すらも近づこうとしないなんて、辺名先生の嫌われぶりはすごい。だけど、辺名先生を大丈夫なのが現在3人。友人であり同僚の綾ちゃん、辺名先生から取られたパンを取り返しにやってくる校長先生。そして、遠藤伽良。しかも、伽良は綾ちゃんも知らないところで辺名先生と仲が良いらしく、辺名先生とフツーに接することができるのは伽良と綾ちゃんだけということか。
 で、辺名先生にも恐れず準備室に入る伽良に、周りの生徒は伽良が辺名先生を好きではないのかという噂が流れ、なぜか自分もびっくりする綾ちゃん。その反応って… 動揺してしまった綾ちゃんの「どーよ、この動揺」という、思わぬダジャレが飛び出してウケました。生徒に恋心を抱いてはいけないと必死になる様は真面目な内容なんだけど、綾ちゃんの心の中の叫びが軽い爽快なタッチで笑えます。

 「なんで教師なんだ。」 たった短いセリフながら、泣きそうな顔をしている綾ちゃんの自分の立場の辛さや気持ちが現れています。



 [ 第4回 ]

 伽良が運んでいた荷物を持ってあげようとした綾ちゃん。伽良は意地を張ってしまったのか何なのか、綾ちゃんの優しさを拒みます。それでも引き下がらない綾ちゃんって優ししいのか何なのか… 結局伽良が怒って二人は険悪なムードになりますが、この時の伽良って綾ちゃんを先生扱いしていない感じで、フツーに男女がケンカしてるみたい。

 貧血を起こして倒れた伽良のお見舞いに行った綾ちゃんが、寝相の悪い伽良に困ってしまって、あたふたしているのが面白いねー。伽良の方を見れなくて、看護師さんに伽良の布団をかけ直してもらったり、でもまた伽良の寝相が悪くなって、綾ちゃんの意志がぶっ飛びそうです。(笑)
 綾ちゃんは伽良が好きなのは辺名先生ではないかと思い、病院に呼び出したのも辺名先生ではないかと思ってるみたいで、自分は嫌われてるかもしれないと思う綾ちゃんのにぶさ。伽良が辺名先生を好きだなんて思えないけどなー。

 辺名先生は、綾ちゃんの心の中とかすべて見透かしてるみたい。「遠藤は独占欲強いぞ。」と綾ちゃんに語りかけるようなセリフ。伽良の気持ちもわかってる?ていうか、綾ちゃんと伽良?



 [ 第5回 ]

 伽良と目が合うと緊張して自然でいられない綾ちゃんの態度に、もしかしたら自分は嫌われているのではないかと思っていた伽良。全くの逆なんですがね、伽良に気持ちを悟られないようにしていた歪みが誤解を生んでしまったようです。だから、これからはちゃんと笑顔でいようと思った綾ちゃんだけど、目線をそらさずの表情がかえって不自然でした。(笑)

 綾ちゃんが伽良に恋してしまったことは明白ですが、伽良も綾ちゃんに気があるのでは?辺名先生を好きだと知られてしまったことにあせったり、綾ちゃんが休みに誰と会うのか気にしてたり。でも、綾ちゃんの中では伽良の好きな人が辺名先生ってことになってるから、もし二人がすでに両想いだったとしてもすれ違っていて、なかなか気持ちが重ならないのがじれったいですが、今の二人の距離感というのも絶妙で、見ていてドキドキです。

 街で偶然会った伽良に貰いものの花を渡した綾ちゃんが、実は似たようなものをこっそり買って渡すという、綾ちゃんの暖かく伽良に対する想いや優しさが感じられますね。ニクい演出です綾ちゃん。

 生徒たちのカラオケになぜか引率の辺名先生。生徒の前で恥ずかしげもなくコスプレでオタク全開。辺名先生ってやっぱり変態…なのかも。


 2巻  2009年4月15日 発売

 [ 第6回 ]

 伽良のライバル登場です。美術教師の花巻先生。自分に優しくしてくれる綾ちゃんにどうやら好意を抱いてしまったみたいで、お見合いを断わって綾ちゃんにアタックしようとするみたい。しかも、熱血タイプで、恋にも積極的そう。
 しかし、それに気付かない綾ちゃん。花巻先生は綾ちゃんより5歳年上で、綾ちゃんは恋に年齢は関係ないと言ってしまったせいで、花巻先生その気になっちゃう。綾ちゃん、自分で災難の(?)口火をきってしまうことになり、どうなるんでしょうかね。
 辺名先生は花巻先生の気持ちに気付いているようで、この物語で綾ちゃんや伽良の心の行動などの役割・説明として動かされるキャラクターになっているようです。

 それで面白くないのは伽良ですよね。花巻先生と綾ちゃんの様子が気になっているように見えるので、伽良も綾ちゃん好きなのかな。花巻先生や生徒が転んだ時は手を差し伸べていたのに、伽良が転んだ時は手をかさなかった綾ちゃんの気持ちというのは、やはり伽良を意識しているため、周りから怪しまれないようにという思いがあるのでしょうか。伽良からしてみれば自分は嫌われているのではないかと思える態度で、伽良のショックの気持ちを思うと切ないです。



 [ 第7回 ]

 花巻先生、災難続き。だけど、そこで幸福になるのが綾ちゃんの存在。ケガ人をいいことに、気絶したふりをして綾ちゃんに運んでもらったり、本当はたいしたことないのに、打撲したとか言って優しくしてもらう。ライバルを蹴落とすとかそういうことじゃなくて、相手に甘えて近づくという行動。こういう女もいやだね。(笑)

 もちろん、伽良からしてみれば花巻先生は嫌な存在。花巻先生が綾ちゃんの気を引こうとウソをついていることを知っている。それが気に入らないのか、花巻先生はウソを言っているのではないかとばらす。正直、伽良の気持ちの方が理解できるけど、花巻先生の気持ちもわからなくもないです。私が両方の立場だったら、二人と同じことをすると思います。でも、私は基本的に善人者側なので、読者としては伽良に肩入れしちゃいます。

 花巻先生は、自分の誘いに断らない綾ちゃんに嬉しそうだし、転んでしまった時自分は助けてくれたことに特別な感情があるのではないかと自意識過剰。(笑) 綾ちゃんとしては受け持ちクラスの生徒が迷惑かけたというお詫びや同情の気持ちだし、綾ちゃんが好きなのは伽良だとわかっているので、それを知らず可能性をかける花巻先生が気の毒です。

 花巻先生と食事に行く綾ちゃんに「行かないで。」の伽良のセリフ、これはやはり綾ちゃんで確定でしょう。綾ちゃん、伽良の気持ちに早く気付いてほしいな。



 [ 第8回 ]

 綾ちゃんが伽良に触れないのは、伽良のことが苦手じゃなくてその逆。彼女に対しては女性としての意識があるため、触るという行為の意味が違ってきてしまう。生徒に何かあったら助けてあげるのは教師として範疇のひとつだから伽良を生徒として扱えばいいけど、綾ちゃんの中では伽良の存在が生徒のひとり<好きな女性という意識になってしまったためにコントロールが難しくなってますね。

 そして、伽良がついに綾ちゃんを好きだと告白するけど、綾ちゃんの答えはノーでもなくイエスでもなく。きっと綾ちゃんにとってもうれしいはずだけど、相手が生徒だから言えない。好きなのに好きと言えない環境。切ないです。
 黙ったまま答えを逸らす綾ちゃんに涙の伽良。フツーに考えれば、返事がない=フラれたも同然という認識になるだろうから、伽良の気持ちを思うと胸が痛いです。



 [ 第9回 ]

 花巻先生が綾ちゃんに告白して、やっと自分に好意を抱いていることに気付いた綾ちゃん。遅いよ!(笑) でも、綾ちゃんとしては伽良が好きだから断ろうとするんだけど、あきらめないと花巻先生。「好きな人がいまして。」と綾ちゃん、まさか相手が生徒だなんて言えないよな。言えねーよ。

 自分はフラれたから綾ちゃんがどんな女性を選んでも仕方のないと自分を納得させる伽良だけど、女性といるところを見ると、やはりまだ綾ちゃんのこと気になっている。今度は自分を助けてくれた綾ちゃんに抱きついてしまう行為に。綾ちゃん、せっかくの決心が、伽良に抱きつかれて耳元で名前呼ばれておろおろ。好きな人にあんなことされたら、綾ちゃんじゃなくても理性ぶっ飛ぶでしょー。怯える綾ちゃんが面白い。(笑) これこそまさに地獄ですよね。



 [ 第10回 ]

 綾ちゃんの好きな人が伽良だと気付いた花巻先生。二人が一緒にいるところを見てしまって、綾ちゃんは花巻先生の誤解を解こうとしますが、それに必死で伽良を置き去り。綾ちゃんって真面目で一生懸命で、だけど不器用な人なんじゃないかな。
 自分より花巻先生を選んだ…という伽良の誤解は解く必要がないと、伽良を突き放そうとする綾ちゃんだけど、基本的には優しい人柄なのでやはり伽良も気になる。生徒と教師という立場が綾ちゃんと伽良の立場を苦しめ、二人の気持ちは届きそうなのに届かない、二人の距離は縮まりそうで縮まない様子がじれったく、道はまだまだ険しそうです。
 それにしても、辺名先生いわく伽良が入学してきた頃から恋をしていたなんて、綾ちゃんどんだけ疎いんだろ。(笑) 生徒からも守備力なさすぎとか時々お前呼ばわりで、綾ちゃん格下扱いです。

 綾ちゃんの行動をフォローしてくれる辺名先生。辺名先生は物語上では嫌われ者だけれど、この物語では恋の傍観者でありながら物語を進行させるに一役買っています。花巻先生の「(綾ちゃんが)抱き合ってた。」に「遠藤か。」とか、考えことに「遠藤のこと。」と、本当に超能力者じゃないだろうかっていうくらいに当ててしまう。綾ちゃんが生徒に手を出すはずがないと言っても、もし出したら「遠藤スゲェとほめてやります。」って、褒めるのは綾ちゃんじゃなくて伽良なのか。(笑)


 3巻  2009年12月15日 発売

 [ 第11回 ]

 花巻先生、冷静になったのか、綾ちゃんのことはどうやら身を引いたみたい。綾ちゃん本人に対しては強気な発言で相手が生徒であることに非難したけれど、失恋して涙をみせる花巻先生の気持ちというのも共感できる部分があるのではないでしょうか。
 そんな花巻先生を慰めてくれるのは意外や辺名先生。二人が急接近ですか!? お互い「別にあなたなんてなんとも思ってないわよ。」という態度だけれど、ラストに辺名先生&花巻先生カップルが誕生していたりして…!?

 綾ちゃんは自分の感情が伽良にいい影響を与えると思えないと考えているようだけど、花巻先生も言っていたように、その行動が逆に伽良を傷つけてる。綾ちゃんは伽良にだけ不自然な行動を取るので、自分は嫌われているのかもしれないという気持ちが出てきてもおかしくない。綾ちゃんの伽良を遠ざける行動は二人の関係がぎくしゃくする原因になるので逆効果です。



 [ 第12回 ]

 伽良に花巻先生に看護師さん。綾ちゃんモテモテ。そして、この中に綾ちゃんの本命がいると知った伽良は気になる様子。両想いなのに困るということは、好きと言えない相手。看護師さんなら問題ないし、同僚の先生でも付き合ってぶんには困らないけど、逆に断った時の方が気まずい。そう考えると付き合って困る相手は伽良しかいない。という答えが出てきて、伽良は綾ちゃんの本命が自分だと感づく。ということで、伽良に綾ちゃんの気持ちがバレてしまい、動揺しまくる綾ちゃん。伽良の綾ちゃんに対する気持ちが少しだけ前進したかな。



 [ 第13回 ]

 綾ちゃんの気持ちが伽良にバレてしまったけれど、それ以降何も言ってこなくなった伽良に悩む綾ちゃん。それでよかったんだと自分を納得させるけど、どこか寂しいと思ったり、何も言わない伽良に自分からけしかける綾ちゃんの支離滅裂さ。伽良を傷つけずに自分の気持ちを切り捨てようとしても、「足もとから世界が崩れていくような感覚に襲われるんだろう。」という綾ちゃんの切ない気持ちが無理しているなとわかるところです。

 相変わらず高みの見物の辺名先生。綾ちゃんは必死に感情を抑え込もうとしているけど、第三者の辺名先生は冷静で客観視。勘違い綾ちゃんに疑問を持つなど、辺名先生の役割が読者と同じ目線になっています。



 [ 第14回 ]

 綾ちゃんにとって地獄の一夜の始まり。伽良の両親が旅行に行っちゃって、弟と二人で残されるんだけど、檀(弟)が風邪を引いて面倒見ることに。そしたら、伽良も熱を出してしまい、彼女の世話までもすることになってしまった綾ちゃん。
 さすがに生徒の家で一晩過ごすのはまずいと思ってみても、子供だけを残しては帰れないからと、誰か別の人に頼もうとしたり、檀の面倒を見ている間伽良が外出するとき、伽良のケータイ番号を聞いてはまずいからと自分のケータイを渡すなど、綾ちゃんの人としての良さや教師との人望がうかがえます。綾ちゃんのケータイが気になる伽良。やっぱり番号知りたいのかな。

 高熱の伽良は意識がもうろうとしているのか、綾ちゃんに突然怒り出したり、服を脱ごうとしたりで、綾ちゃん動揺しまくる。だれもつかまらなくて結局頼んだ辺名先生もなかなか来なくて、どうしていいかわからずあわてる綾ちゃんが今回も面白いです。

 「オレに対して結婚十年以上たった亭主のようなぞんざいな扱いするよな。」
 時々生徒と教師の関係でなくなるような綾ちゃんと伽良の関係。二人の距離感が絶妙です。



 [ 第15回 ]

 近づきそうで近づかない伽良と綾ちゃん。看病してくれた綾ちゃんに帰っていいよと言ったのは、特定の生徒の家にいる綾ちゃんが問題視されることを心配していたから。だけど、綾ちゃんはそんなの気にしなくて、もしそんなことになっても伽良がちゃんと守られるようにって考えていてくれた。
 その話の流れで、綾ちゃんが8歳年下も恋愛対象内になるってことを今更話題にされて動揺してるけど、今までその話に触れなかったのは綾ちゃんが困ると思ったから。伽良に告白されて本当は嬉しかったけれど、「スキ」と言えない悲しい立場の綾ちゃん。二人はもう両想いなことが目に見えてるのに、二人とも自分の立場や相手の気持ちを同じように考えてるから、本当に今にも「好き」だと言ってしまいそうなほどの距離だけど感情が邪魔してその寸止めで終わるという、見ている私も切なくなります。
 そんな伽良に綾ちゃんの感情は「好き」から「愛しい」に変わっていく。伽良のことをどんどん好きになって大切で守りたくなってくるような、綾ちゃんの心の変化。伽良は素直でまっすぐにぶつかってくる。今もそんな伽良に綾ちゃんの心は惹かれたのかもしれないですね。ますます目が離せない展開です。Cookie本誌では次の展開になっているらしいけど、私はコミックス派。4巻そろそろ出ないかなぁ。続き読みた〜い!!(2010年6月時点)


 4巻  2010年8月12日 発売

 [ 第16回 ]

 綾ちゃんの徹夜看病のおかげで伽良の具合はすっかりよくなりました。よくなったのはいいんだけど、看病中に伽良の部屋で寝てしまって、それをアウトだとかセーフだとか判断するのは、もちろん綾ちゃんにとっては真剣で間違いが起こったら大問題なんだけど、なんだか伽良に対しては失礼なような気がしてならないな。そしたら、綾ちゃんもアウトとかセーフとか言うなと自身にツッコミを入れてくれて安心しました。
 能天気な伽良のお母さんは相変わらずで、伽良の看病を任せてしまうという、綾ちゃんをまるで近所の親しいお兄さんのような扱い。娘の部屋に担任がいようが関係なし。伽良母は一体何を考えているのかわかりません。

 伽良の風邪が治ったら、今度は伽良の風邪が移った綾ちゃんが寝込むことに。母親から綾ちゃんの具合が悪いと知って伽良がお見舞いにいきますが、自分の部屋で伽良と二人きりなんて、我慢の糸が切れる展開はいくらでもあり、風邪の中でも綾ちゃんはまたまた理性と闘うことに。熱で意識が朦朧としているのかどうなのかわかりませんが、理性と闘いながらも、もうガマンするのは嫌だと感じる。

 オレはもう、この誘惑に負けてしまいたいんだ

 綾ちゃんの心の叫びはどれも彼のガマンやツライ気持ちがとても伝わってくる言葉。気持ちではガマンしていても、行動はそれを時々拒否しそうになってる。言動が矛盾、正確には正直な行動を理性に従わせようとしているんだけど、その矛盾しているところが、綾ちゃんの性格だったり伽良に対する想いが抑えられないくらいの気持ちになっているところがよく現れてますね。



 [ 第17回 ]

 綾ちゃん、伽良に堕ちる――わけがなく、その寸前で電話が鳴り響いて目が覚めました。電話の呼び出し音を警報と表現しているのが、綾ちゃんの理性を保つ精一杯の気持ちだとわかります。
 綾ちゃんが中途半端な態度を取るのでまた伽良が悩みます。綾ちゃんの気持ちを試そうとするような行動を取るけれど、そんな時こそ教師という顔をする。いつになったら綾ちゃんの限界が来るんでしょうか…

 電話の相手はどうやら女性のようで、伽良は気になる。相手は名前は名乗らず、綾ちゃんの下の名前を呼んだだけで切れてしまったので、だれなのかわからない。綾ちゃんはとくに何も言わずで、伽良の悩みの種がまたひとつ増えそうです。



 [ 第18回 ]

 昔の女出ましたねー。綾ちゃんの元カノ・梨花。キレイで見た目でいえば綾ちゃんとお似合いなんだけど、性格が最悪…。綾ちゃんの生徒を何かバカにしている目で見てるし、辺名先生とは嫌味を言い合う犬猿の仲という雰囲気。
 でも、2年も付き合ってなぜ別れたのか気になるところですが、やはり辺名先生は読者への解説役を担っており、梨花と綾ちゃんの関係も知っているよう。綾ちゃんの前に現れた理由を「自分で自分のお守ができなくなったんだろう」と推測している辺名先生ですが、この元カノには何か隠された秘密でもあるのでしょうか。

 梨花の登場により、伽良が穏やかでないことは事実でしょう。綾ちゃんと自分の関係に悩む前に、元カノとの関係も気になって、まだまだ綾ちゃんと伽良の距離は縮みそうにないですね。

 あと、ちょっと気になった辺名先生と花巻先生。二人揃って出現したのは何か特別な意味でもあるのか。何気なく現れて二人については深く追求されてませんが、辺名&花巻先生のツーショットがミョーに気になるサイト管理人です。(笑)



 [ 第19回 ]

 綾ちゃんがまた伽良を避ける行動に出ました。本当は我慢も限界に近づいているはずなのに、それでもやっぱりもしものことがあって伽良が傷ついたらまずいという綾ちゃんの良心があるんだと思いますが、二人の気持ちはすでにわかってるのになかなか埋まらない距離にじれったくなります。
 伽良は梨花が現れてから綾ちゃんの態度が冷たくなったと思ってる。それって伽良の中では、綾ちゃんが元カノの存在を気にしてる、つまりまだ未練があるのではないかという思いが払拭できないでいることになるんでしょう。でも、実際のところ綾ちゃんの態度を見ると梨花に未練があるようには見えず、彼女と話しても冷めてる感じです。
 実際の綾ちゃんの現状と伽良の認識がまたずれることになり、しばらくは元カノ問題で伽良が揺れるんでしょうね。二人とも悩んでるんだけど、綾ちゃんの気持ちはいつも変わっていないのに、不安の種がコロコロ変わっているのは伽良の方で、綾ちゃんの態度や気持ちが伽良に伝わればそれで簡単に解決する問題なのに…と思うんだけど、そうはいかないのが漫画の世界です。

 梨花がとうとう伽良に接触。梨花は伽良が綾ちゃんの生徒であることを知りますが、伽良が綾ちゃんを好きなのではないかということにも気付いているかもしれません。根拠はないんですが、辺名先生いわく“妖怪”のような彼女の表情から、人の心を見透かすような雰囲気が直感で感じられたので。
 梨花と鉢合わせして困っているところへ現れた花巻先生。伽良とライバルだった時は勘違いぶりにイラっとしたけど、基本的に花巻先生は生徒の気持ちがわかる素敵な先生でもあるので、この救世主ぶりは好感あります。今後も花巻先生がそういう立ち位置で伽良を見守ってくれるといいですが。



 [ 第20回 ]

 学校での帰り途、再び梨花と会った伽良。伽良がいちばん会いたいくない相手…。相変わらず綾ちゃんを待っているようだけど、連絡せずにいるのか、ひとりで勝手に行動しているだけのよう。しかも伽良の目の前で本性が出た?ある意味辺名先生と似ている。気性が激しかったり、自己主張が強い性格がぶつかると融通がきかなくてまったく合いません。だから梨花と辺名先生は似た者同士で合わないのか。似た者同士で意気投合すればすごくいい組み合わせなんだけど、お互い譲る気もなく嫌ってしまうと最悪になりますからね。

 梨花は綾ちゃんと付き合ってた頃の話をする。綾ちゃんは梨花に対して自分の感情を見せてくれていた。それって伽良に対して梨花のちょっとした意地悪なんじゃないかと思ってしまいます。実際綾ちゃんが自分の感情を伽良に見せないというか、見せてしまうと大変なことになるのでみせたくてもみせられないが正しいんだけど、それでも綾ちゃんの気持ちがはっきりと確信が持てない以上、伽良にとっては今のところ梨花が優勢となってしまいそう。

 本当は綾ちゃんと会ってほしいくないと思ってるのに、雨に降られずぶぬれになっている梨花を放っておけず、伽良は綾ちゃんに助けを求めます。読者からしてみれば恋敵相手に手助けするなんてイライラするところですが、それとは関係なく困っている人を助けるという人としての良識ある行動をヒロインに取らせることで好感が持てより親しみやすくなるし、相手を好きになるという点でも常識を持った人間の方がいいですよね。気持ちに正直な真面目なヒロインがいることでヒール役も際立つものだし、物語が面白くなっていくものです。

 でも、いつもは意地悪そうにみえる梨花が、今日は様子が違って見えました。どこか危なげな行動や時折みせるさみしそうな表情。それに、希望とか夢とか家族とか友達とか、みんなが持っている大切なものが自分にはないと言ったことや残骸にすがるとか、彼女の暗い面がみえてきています。梨花にも何か過去がありそうです。


 5巻  2011年1月14日 発売

 [ 第21回 ]

 梨花をマンションにあげた綾ちゃん。自分から梨花を助けてあげてと綾ちゃんを呼び出したけれど、やはり梨花と二人きりにはなってほしくなくて涙する伽良がかわいそうで… 綾ちゃんが梨花に対してもう特別な感情がないとわかっていても、伽良はきっと綾ちゃんが梨花を選んだと思ってるだろうろから本人はつらいはず。

 でも、実際のところは、綾ちゃんは梨花を部屋にあげると、自分はさっさと出ていってしまう。梨花はまだ綾ちゃんに未練あるのがよくわかり、過去をひきずっているのか彼にすがろうとする。だけど綾ちゃんは梨花にとって自分は残骸でしかないという気持ち、彼女の気持ちをあっさりと拒むところをみると、梨花への気持ちはすでにないことが読み取れます。

 辺名先生、相変わらず鈍感な綾ちゃんにいろいろと助言しています。辺名先生の言う失敗というのは、伽良への気持ちを断ち切ることでしょう。綾ちゃんが「遠藤と一緒にいると梨花のことばかり考える」と言っていますが、もし綾ちゃんが伽良への気持ちを抑えようとしていても、それに対してもうそれは手遅れだ、というのが辺名先生の言いたいことなんじゃないかな。
 でも、伽良と一緒にいて梨花のことを考えるとはどういう意味だろう?伽良といて梨花を考えてしまうということは綾ちゃんは梨花のことをもちろんそれなりに知っていることになるし、伽良と梨花とで何か共通することがあるということでしょうか。



 [ 第22回 ]

 なんと、梨花は高校生の時に担任教師と付き合っていた過去があったのでした。でも、そのことが周囲にばれて一人ぼっちになって人間不信に陥り、そんな彼女を献身的に支えたのが綾ちゃん。教師と付き合ったことで梨花は大切な何もかもを失って人生が変わってしまった。梨花を支えていた当時の綾ちゃんがなんで教師のくせに生徒に手を出したんだって思っていたのではないかと推測する花巻先生のように実際にそう思っていたら、綾ちゃんは当時梨花が付き合っていた担任と同じ行動を取ってしまうことになり、その梨花の立場が伽良になるわけで、梨花と同じように生徒の人生を台無しにすることは絶対にできない……ということでしょうか。
 じゃ、梨花を献身的に支えるほど彼女に好意を抱いていた綾ちゃんなのに、なんで二人は別れてしまったのでしょう。当時梨花は心を閉ざしていたので彼女が人に恋愛感情を抱ける状況はなく、綾ちゃんの方が梨花に好きという気持ちがあったはずなのに、今では綾ちゃんすっかり梨花のことは過去になってしまってます。

 伽良が綾ちゃんに気があると本人が言っていたという梨花の話と、教師が高校生をたぶらかすのなんて簡単だって綾ちゃんが言ったという話、梨花と綾ちゃんが再会してそんな話をする時間はなかったはず。少なくとも本編でそんなシーンは描かれていません。これは一体どういうことでしょうか。



 [ 第23回 ]

 梨花と綾ちゃんが別れた原因、それは梨花が元カレの教師のところに戻ったからということで、それがやっぱり別れたからまた綾ちゃんのところに戻ってくるのはずいぶんと都合のいい身勝手な女だと。でも、花巻先生が言ったみたいにもし梨花が相手の教師との恋愛にも真剣だったとしたら、元カレのことが許せないという綾ちゃんの気持ちが同情に見えてしまったという気持ち、周囲にばれて別れたとしても真剣だったら綾ちゃんの気持ちは重く感じて、好きだった人に戻りたいという気持ち、なかなか説得力ある説明だったなと個人的には思います。

 綾ちゃんが伽良に手を出さないでいるのは、やはり過去の梨花との恋が影響している。自分の元カノが教師と付き合って大変な目に遭い、今度は怒りを向けていた教師と同じ立場になって、生徒である伽良がいろいろなものを犠牲することになったら、と思うと手なんて出せないのは当然。花巻先生が言ったみたいに、
手を出そうと思っても出せないことになります。

 遠藤と
いても梨花のことばかり考える
 遠藤と
いると梨花のことばかり考える
 前者は伽良といても考えるのは梨花。後者は、伽良といることによって梨花を考えてしまう。つまり、前者は梨花を、後者は伽良のことを考えているということになり、今の状況の綾ちゃんは後者になります。

 梨花から「もう会わない方がいい」と言われ、二人の関係に決着でしょうか。たしかに今の綾ちゃんと梨花を見ても完全に気持ちはもうすれ違っていて、一緒にいても同じような結果を繰り返すだけかもしれません。

 そうなると片付けなければいけない問題は伽良のこと。伽良は綾ちゃんが梨花に自分の気持ちを話したと誤解したまま。
 辺名先生が失敗しているといったのことは、伽良への気持ちを否定する時期のこと。今まで伽良の気持ちを否定する時はいくらでもあったのに、綾ちゃんはそれを自分で断ち切ってきました。結果、伽良からみれば思わせぶりのような中途半端な態度を取り、いまさら否定するなんて、それこそ伽良を傷つけますよね。さすがにいつまでも煮え切らない綾ちゃんの態度に、梨花の出現は伽良の気持ちを大きく動かすことになったのか、綾ちゃんに今までの思いと怒りをぶつけることに。今まで誤解があってもそれを否定せずにいましたが、失敗の意味に気付いたのか、ついに自分から誤解を解こうとします。綾ちゃんにはいい加減自分の気持ちをはっきりさせてほしいものです。



 [ 第24回 ]

 伽良に梨花との誤解を解こうとする綾ちゃん。梨花と二人で伽良のことをバカにするなんて綾ちゃんは絶対できませんよね。伽良のことが好きなのはもちろん、彼の性格からもそんなとこはないでしょう。高校生をたぶらかすのは簡単だって言ったのは、当時梨花を傷つけたことに対しての怒りであって、綾ちゃん自身が女性を弄ぶような意味での発言ではないです。伽良にきっぱり否定したけれど、だからってたぶらすという発言の本当の意味、つまり梨花のツライ過去を自分の中にしまっておく綾ちゃんの口の堅さは見上げたものです。綾ちゃんって人としての常識とかがよく備わっていて、なかなかの好青年です。(生徒を好きになったことが背徳だと思うことは目をつむっておこう。(笑

 伽良はそれでも綾ちゃんのことが信じられなくて、ついにブチ切れ。今までの綾ちゃんは伽良に思わせぶりのようにみえる態度を取り、距離が縮まればまた離れるの繰り返し。だから今回もそうやってまた逃げるんじゃないかって思ってしまう。今まで中途半端な態度を取って来たんだから、しっぺ返しが来たと思って。
 でも、綾ちゃんの気持ちは伽良が好きだということに変わりはなくて、人としてクズよ、最低!とか伽良に言われて、綾ちゃんも逆ギレ!さすがに人間否定されると怒れるよね。好きなのに素直になれなくてケンカになってしまうのって、伽良と綾ちゃんの場合ってなんだかほほえましいです。綾ちゃんって人が出来てるわりには子供みたいにむきになってケンカして大人げない行動を取る時があるんですよね。でも、そういう人としてのバランスが取れてるところが綾ちゃんの魅力だと思います。
 それまでは伽良と言い合ってた綾ちゃんがついに本気で怒りました。これは好きだからこそ。好きなのに信じてもらえない。信じてもらえない時は実行あるのみってことで、伽良にキスしてしまうという強硬手段に!きゃ〜!!綾ちゃんついにやってしまいましたよ〜(^o^)/まさかここで綾ちゃんがあんなわかりやすいアクションを起こすとは予想外だったのでびっくりしましたが、正直うれしい展開。(*^_^*) やっとそれらしくなる手前まで来たかな。綾ちゃん、よくやりました。
 言いあいながら伽良のこと遠まわしに好きだといってしまいましたので、これで完全に気持ちからも伽良からも逃げることはできません。さすがにここまでくれば綾ちゃんは露骨に避けるような態度を取ることはないと思いますが、どうなるでしょうか。



 [ 第25回 ]

 綾ちゃんが伽良に「好きだ」ってやっと言いましたよ〜。いや〜、よかったですねー。伽良も綾ちゃんもおめでとう♪なのに、浮かない顔をしている綾ちゃんをみたら素直にうれしいの一言が言えない伽良。綾ちゃんの表情が暗いのは、やはり好きという確かな気持ちはあるものの、教師と生徒というタブーな関係が影響しているのでしょうか。実際に公にはできない関係ですから、周りに本当のことは言えるはずもない。伽良を大事にしていながらも、彼女のことを想えば想うほど、周りにウソをつけばつくほど綾ちゃんの心は痛むのかもしれませんね。
 それでも好きだという気持ちに偽りはないから前へ進んだんだと思いますが、気持ちを知ったからと言って情熱的ではなく静かに動いていくのがこの二人。だからすぐにラブラブとかそういうことじゃなくて、今までのように二人の気持ちや距離なんか丁寧に描かれていくんだと思います。

 5巻終盤にかけて急展開になり、この先目が離せません。ようやく伽良に告白した綾ちゃんですが、二人の恋はまだまだ前途多難なような気がしてなりません。