メリーゴーランド
 シリーズ…講談社コミックスなかよし
 著者…八木ちあき
 出版社…講談社
 巻数…全3巻
 発売年…1994年〜
 掲載誌…なかよし
 参考リンク…講談社BOOK倶楽部



■ ストーリー ■
 中学生の野本はるかは、父親と二人暮らし。中2の春、父親が再婚。家を構築し、義母の家族とも一緒に住むことに。義母の弟は、なんと新しく転任してきた小泉先生。おまけにはるかのクラス担任にもなってしまった。いきなり叔父・担任になってしまった小泉先生とひとつ屋根の下で暮らすけれど…


■ 総評 ■  ★★★☆☆

 なかよし連載ということですが、フツーに別冊フレンドでも連載できる内容だったのではないでしょうか。なかよしはヒロインが中学生以下という規約があるらしいので今回はるかは中学生という設定ですが、はるかが高校生でも進められる内容でした。ただ、やはりなかよしなのであまりドロドロした内容や確執にはなっていないですね。智と小泉先生の関係ももっとぶつかり合うかと思ったらそうでもないし、はるか側の先生をめぐっての対立もそこまですごいというものではありません。そういうところはなかよし読者へ配慮したカタチとなっています。

 ただ、先生・生徒モノと言っても、学園生活をのぞいている感じがメインで、その中で恋愛模様が描かれる感じがしました。はるかの先生に対する気持ちというのも具体的にはあまりなく、動きも地味でした。これははるかが中学生という設定だからでしょうか。そういうことを考えると、中学生らしい先生生徒モノなのかな。

 上記で述べたみたいに、はるか、友人の千尋や智の中学生ライフを見ている感じで、3人の掛け合いの印象が強く、そこに楽しませてもらった部分もあります。千尋と智の主従関係みたいなものが笑えました。智は千尋に逆らえない、哀れな運命だなと…
 智のはるかに対する想いも、告白したけどあっさりしてて、その後の二人が大きく動くこともなくて、小泉先生とのバトルを期待していた読者にはがっかりだったかな?

 でも、全体としてはなかよしだったことを考えると良い出来だと思います。この時期(1994年〜1995年)になかよしで先生生徒モノ恋愛漫画があったなんて気付きませんでした。当時なかよし愛読者だった私ですが、先生生徒の恋愛なんて眼中になく、愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーンに夢中だったわ。(笑) あっ、でもセーラームーンも面白いのよー。☆ 同じころの作品ではりぼんは恋愛漫画読んでましたけどね。(ママレードボーイとか。)


■ 登場人物 ■
 
野本はるか
 中学2年生。バスケ部。
 
小泉比呂也
 はるかの担任で叔父。
 
早瀬千尋
 はるかの親友。
 
日比野 智
 はるかのクラスメイト。
 
池沢広一
 はるかたちの先輩。


※ここより下はネタバレとなっています。了承したうえでお読みください。


 1巻  1994年12月 発売

 ヒロインの親が再婚して、再婚相手の身内が担任の先生というよくあるパターンで世の中狭いもんです。しかも、同じ家で家族として住み、しばらくして両親が新婚旅行に出かけて家で二人きりという、はるかと小泉先生の接点を作るに十分な設定になっています。
 ただ、先生生徒モノでありながら、いまのところ二人に家族以上の進展というのが見られません。はるかが終盤になってもしかしたら先生が好きかもという意識は出てるけど、まだはっきりとは現れていないし、はるかはバスケ部の池沢先輩が好きというワンクッションある中で、小泉先生とは家族としてケンカしながらも仲良くやっている雰囲気です。

 はるかの親友であり同じバスケの早瀬千尋。同じくクラスメイトでバスケ部の日比野智。はるかと千尋、智の楽しいやりとりもみどころのひとつで、1巻はまだ楽しい学園生活を覗いているまでですね。

 はるかと小泉先生以外の恋模様の方が1巻ではメインで出てきて、はるかも好きな池沢先輩は実は千尋のことが好きで告白して、でも千尋ははるかが先輩のことを好きなのを知ってるから振ってしまったり。千尋が池沢先輩を好きな女子の先輩たちからねたまれて髪を切られてしまうシーンが衝撃的。意外と子供ってそういうこと平気でやってしまうんですよね。これって立派なイジメだと思いますよ。コワイ…
 それからもうひとつの恋(?)というのが、智のはるかへの気持ち。具体的には描かれていませんが、彼の態度や様子を見るとはるかに好意を抱いているのがなんとなくわかるんですが、どうでしょうか。一応、先生の次にメインとなる男の子キャラなのでポジション・役割としては基本だと思います。

 2巻  1995年4月 発売

 はるかと小泉先生が同棲しているっていうイタズラが黒板に書き込まれて、あっという間に学校中のウワサに。でも、それは池沢先輩が好きで前に千尋の髪を切ってしまった性質の悪い女子生徒がやったことだと判明し、智が怒ったように私も腹立たしかった。千尋の友達のはるかも巻き込んで、周りも不幸にうするという卑劣な行為はみにくい人間がするものだなと.。でも、漫画の世界にはこうやって悪役も登場させて物語を膨らませなければならないのでしょうがない。それでも腹立ったな。
 理科が苦手なはるかが先生と同棲したことでテスト問題を教えてもらったのではないかという噂までも流れてしまったけれど、先生の家に押しかけた生徒たちに、はるかと同じように理科のプリント数十枚をやらせるという拷問行為で、はるかの潔白が証明されるカタチになり、小泉先生のはるかをかばう優しさが現れていました。

 脇役サイドにも動きがあり、はるかが千尋の背中を押して、池沢先輩と千尋が両想いに。正直、池沢先輩が千尋を好きだったことには驚いたので、この二人のカップリングというのは私の中ではへんな感じ… でも、池沢先輩を好きだったはるかが千尋の恋を応援したことで、物語は小泉先生を好きになっているはるかが都合よく動かされたカタチとなり、結果的には無難なところだと思います。

 一方、気になるのははるかと小泉先生、そして智の三角関係(?)。案の定、智ははるかが好きだった。そして、智ははるかが小泉先生を好きなことも知っている。だけど、智は意外と冷静で、小泉先生とはるかを取り合うような関係にはなっていないし、はるかがだれを好きでもいいという態度。無論、小泉先生がはるかを好きかどうかなんてことは読者には(今のところ)わからなくて、はるかが一方的に好意を抱いているだけなので。

 はるかの中では先生が好きという気持ちは大きくなっているけれど、気になるのが、先生に手紙を送っている関根美香子さんという人の存在。実は、星美館高等部の美女で、小泉先生が大学時代に家庭教師をしていた教え子だった。車に乗せていたら事故に遇ってしまったという事情がある。彼女が先生の恋人ではないかと噂になっていますが、先生は否定しましたし、イヤらしい読者ですが漫画のセオリーとか役割を考えると、彼女が一方的に迫ってるだけのような気がします。ただ、彼女はピアノを弾いているらしく、「ピアノが弾けなくなった。」というのは、おそらく事故が原因なのかなと思います。そうすると小泉先生にも責任が問われるわけで、美香子とのことはこのままでは終わらないんじゃないかなと思います。
 ラストではるかが先生を好きだとついに告白しましたが、その時、美香子さんの気配がありましたね。仲良しだったはるかと美香子さん。今度はライバルになってしまうのでしょうか。


 3巻  1995年11月 発売

 先生と関根美香子の関係。そして、事故の真相。事故に遇ったのは先生に過失があったわけではなく、両親と口論になって家を飛び出した美香子を送る途中で、先生の説得を聞き入れない美香子がハンドルを無理やりきって起きてしまったという…漫画だからよかったけれど、実際にこんなことになったらシャレにならん… そのために犠牲になった小泉先生が気の毒というかかわいそう。しかも、美香子をかばって責任を取ると言う、本来あるべき姿が少女漫画のカッコイイヒーロー像です。
 やはり3巻は小泉先生と美香子の関係が軸となって物語が進んでおり、彼女が最終回へ向けてのキーパーソンとなっていました。少女漫画のセオリー通り、はるかにとって恋のライバルであり悪役とまではいかないけれど敵役という期待通りの動きでした。
 美香子の右手の再手術でアメリカに行くことになって、先生もその責任からついていくことになったわけだけど、何も悪くないのに、自分勝手な女のために犠牲にさせられるなんて先生がかわいそすぎます。でも、やっぱりアメリカにはいかなかったことで、読者としての気持ちもすっきりしました。好きな人にウソついてまで、周りを不幸にしてまで自分が幸せになりたいとは私は思わないですから。

 この作品を読んでいない人で、勘の鋭い人ならもうおわかりかと思いますが、比呂也先生がアメリカへいかなかった理由は、もちろんはるかを選んだということになります。比呂也先生が野本家の二世帯住宅から出ていって、はるかは先生との接点がなくなり、美香子がウソで先生と婚約するといって自分は身を引く。比呂也先生も美香子のアメリカへついていく決心をしたけれど、どこかではるかのことは気になっており、結局美香子はひとりでアメリカへ旅立ち、最後にようやく二人の気持ちがひとつになったのでした。
 美香子がひとりでアメリカへ渡ったことで、比呂也先生が責任から解放されたという意味が込められ、はるかのところに行く理由の説明がつくし、美香子が比呂也先生を諦める理由も納得できて、無理のないハッピーエンドだったと思います。まぁ、相手が中学生ってところ自体に難ありな感じもしますが、そこを否定したら作品自体を否定することになりますから気にせず。



 [ 「メリーゴーランド」Special ―はるか 17歳・夏― ]

 最終回から3年後を描いたその後のストーリーです。本編ラストで気持ちが通じ合ったはずのはるかと小泉先生だけれど、はるかの中では自分たちは恋人ではないし、前と変わらない子供扱いという認識になっている。いやぁ〜、恋人でもない年頃の男女がプライベートで待ち合わせたり、デートみたいなことしますかねぇ? それに美香子さんから手紙が届いてて、アメリカに二人で住める部屋を探したということで、はるかは先生に真相も聞かず、おまけに日本に凱旋帰国した美香子(手術は成功。ピアノも再起)が結婚式を挙げるという話で、先生と美香子は結婚して、先生はアメリカに行くということを勝手に頭の中で組み立ててしまって。だれがとも言ってないのに…
 もちろんそれははるかの誤解で、先生ははるかも連れてアメリカへ行くことを決め、はるかと二人で暮らせる部屋を美香子に探してもらうように頼んでもらっていたという、なんとなく先が読める感じでしたが、はるかが先生に大事にされててよかったなと。
 そして、18歳の夏。なんと、二人が結婚という超ハッピーエンドで続編を締める、これが本当の意味でのはるかと小泉先生のゴール、そして新たな人生のスタートラインかなと思います。はるかの妹・えりかが物語で出てきましたが、はるかっそくりで、もしもはるかと先生に子供ができたら、女の子ならえりかちゃんみたいにはるか似のかわいい子が生まれるんだろうなぁ。ちょっと見てみたい。

 脇役のキャラクターたちのその後も幸せそうで何より。本編3巻のバレンタインデーで、菜々美ちゃんが本命チョコを智に渡していましたが、やはりあの二人はそのままくっついたみたいでした。千尋と池沢先輩は、最初は違和感ありなカップルでしたが、千尋が高校生になったことで少し大人な雰囲気が出てきてお似合いになったんじゃないかなと。やっぱし、中学生っていうのがダメだったのかな。