Oh!myダーリン
 シリーズ…講談社コミックスフレンド
 著者…上田美和
 出版社…講談社
 新書判…全8巻
 発売年…1992年〜
 デラックス版…全5巻
 文庫判…全5巻
 X文庫(小説版)…1巻(第1部収録)
 掲載誌…別冊フレンド
 参考リンク…講談社BOOK倶楽部




■ ストーリー ■
 森永ひかるは16歳の誕生日に幼なじみの明智晋平と結婚。だけど、ひかるの通う高校は男女交際禁止の学校。おまけに男子高にいた晋平がひかるの高校に赴任してきて… はたして、どうなる?二人の運命…


■ 総評 ■  ★★★★★

 このマンガ、とにかく素晴らしい!

 主人公・ひかるちゃんがとにかく「シンちゃんシンちゃん」で、よく泣くし、わがままお嬢様。人によってはひかるにイライラすることでしょう。そのひかるに常に振り回されて苦労しまくっているシンちゃんはお気の毒さま。でも、ひかるを守る使命にまっとうするシンちゃん、とくに後半なんかは胸キュンです。ひかるのことで苦悩するシンちゃんの気持ちがリアルっぽくて、女性漫画なのに男性の方が感情移入できるなんてあんまりない経験でした。シンちゃんがカッコ良いです。☆

 第一部では教師と生徒という立場で結婚してしまった二人についてよく考え、第2部では結婚した二人が迎える大きな試練に大人になって夫婦としての絆を確かめ、第3部では真の意味で夫婦になった二人が本当に迎える愛の試練であり夫婦としていたわり合うという、最初は夫婦としての愛情が感じられなかった二人が次第に距離を縮めていく過程や心理描写など素晴らしかったです。
 また、余分なキャラクターがいない、キャラの動きに無駄がなくてちゃんと描きこまれてました。各部で亜矢子や優実の徹底した悪役ぶり、主人公を取り囲む登場人物すべてが与えられた仕事(役割)をしっかりこなしてました。よく描きこみが足りず途中でドロップアウトしたような半端さや、たいして必要のないキャラがいたりする漫画もあるのですが、この作品にそれが感じられなかったのは上田美和先生の力量でしょうね。とにかく、構成、ストーリー、キャラクター、すべてにおいて素晴らしい出来でした。さすが講談社!
 「海の天辺」や「先生!」などの名作もありますが、この作品は全体のクオリティが高く、名作の中でも特別に位置付されてもいい素晴らしい作品です。先生・生徒モノの中でも代表格、少女マンガとしても非常に良いです。

 私が先生と生徒モノで初めて読んだ漫画がこの「oh! my ダーリン」で、面白くてハマっていまい、今後いろいろなマンガを読んでみようというきっかけをくれた思い入れ深い作品です。先生と生徒の恋愛モノが好きな人なら一度は必ず読んでおきたい作品です。



■ 登場人物 ■
 
森永ひかる
 高校1年生。16歳の誕生日に幼なじみの明智晋平と結婚。
 
明智晋平
 ひかるの幼なじみであり今は夫でもある。社会科教師。
 
小土居賢二
 ひかるの級友。ひかるに求愛するが、先生との結婚を知り失恋。
 
川崎園子
 ひかるのルームメイト。小土居の幼なじみ。


※ここより下はネタバレとなっています。了承したうえでお読みください。


 1巻  1992年4月 発売

 [ 第1部 ]

 面白そうな作品の登場です。主人公のひかるはおじいちゃんのすすめで好きでもない男の人と結婚させられそうになるんだけど、それが嫌で幼なじみのシンちゃん(晋平)に「私と結婚して〜」と、ある意味脅迫ともとれる(?)プロポーズだわ。好きでもない相手なら結婚するわけはないと思うけど、なんだかこれだけでは説得力に欠けるような気がしないでもないです。ひかるが晋平と離れたくないからとトイレに立てこもったり、ひかるのおじいちゃんが新婚夫婦が離れてるのはいけないから…と勝手に晋平の辞表出してひかるのいる高校へ転勤させるなど、森永家の勝手ぶりに笑ってしまいました。でも、それがなんだか面白くすっかり私のハートを掴んでしまったのでした。

 ひかるの通う英学園は明治創設で、男女交際禁止、生徒の平日は寮生活で門限6時消灯時間10時だなんて現代っ子にはありえない生活です。しかも、男女交際禁止の学校なのに先生と生徒が結婚してるなんて、バレたら退学・懲戒免職ものだろうな。今時の少女マンガに古風な設定があるのも面白くていいです。

 ひかるは甘えん坊のワガママお嬢様タイプ。シンちゃんと離れたくなくてトイレに立てこもる、学校で他人のふりをすることに納得できない、せっかくの夫婦の休日にクラスの女生徒がやってきて機嫌を損ねる、距離を置こうとすると「いや〜!」て泣きつく…など、もうわがままし放題ですよ。(笑) それをなんとかなだめるシンちゃんは大変。突き放そうとするとひかるに泣かれシンちゃんの決心が鈍る。(笑) 小さい頃から“守る”という意識が働いているせいでしょうか。ひかるに辛い気持ちをさせたくなくて甘いのかな。シンちゃんの苦労がすごく想像できます。
 ひかると相思相愛とはいえ、まだ二人の間には夫婦というには距離があるように思います。ひかるが特別な存在であることにはかわりなく愛情を持っている、だけど親代わりが急に夫婦関係になって扱いに困惑して二つの気持ちで葛藤している晋平の気持ちがリアルっぽい。私もシンちゃんが本気でひかるのことを愛しているのか、読んでいて疑ってしまいたくなるぐらいです。

 ひかるが意外にも?早く小土居くんに明智先生との仲を打ち明けたので、早くも失恋決定?? 生徒と先生が結婚してるパターンだと、関係は早いうちから気付くものの付き合ってる程度レベルの認識ですが、結婚となると恋愛したら不倫になりますから小土居くんに勝ち目はなしか?彼の活躍に期待。


 2巻  1992年7月 発売

 [ 第1部 つづき ]

 ひかるのおじいちゃんの病気が誤診と判明して、結婚する理由がなくなったからとおばあちゃんが晋平に「別れてほしい」と詰め寄り、そこに追い打ちをかけるように今度は二人の婚姻届が出ていなかったことが発覚!!私も呆然…でもなぜ??おばちゃんがあまりにも反対するので様子を見ていたそうだけど、二人で出しにいけなかったのか。私はそこんとこよく知らないのでなんとも言えませんが…
 それでやっぱり騒ぐのはひかるちゃん。「シンちゃんのそばにいられなくなる〜今すぐ出して〜」って泣きわめく。シンちゃんはひかるの将来のことまで気にして慎重になっているのに勝手なんだから〜。で、シンちゃんが神戸の姉妹校へ転勤になると知ってまた泣く…それは学校にとって不都合なら自分は別の学校に行ってひかるとの結婚を許してもらうためなのに… 疲れますね…(笑)

 そこで、ひかるちゃんが考えたのがかけおち作戦!「私とかけおちして!」とまたシンちゃんを脅すような流れ。しかも本当に行動を起こそうとして、シンちゃんだってほっとくわけにはいかず。だけど、世の中そうそううまくいくもんじゃなくて、会議が長引いたうえに街で問題起こした生徒の補導を手伝わされ… ひかるのことでいっぱいなのに犯罪犯した生徒の面倒なんてシンちゃんかわいそうに。
 結局シンちゃん時間に間に合わなくてひかる(と小土居君)の逃避行劇になっちゃうわけですよ。2巻は北海道に逃げるひかるとそれを追うシンちゃんがずっと描かれることになります。シンちゃんが来ないのに勝手に北海道いったくせに、見つけてほしくてサインを送る。だけどまたシンちゃんから逃げる…。ある意味そこまでできるひかるの行動力に感心しちゃうよ。シンちゃんがどんな気持ちで必死になってひかるのこと探しているのか考えてあげてほしいものです。
 でも、ひかるのことは何でもわかりそうなシンちゃんもすごい。かけおちなんてバカなことだと見捨てないでひかるの行動を信じる、ひかるが行きそうな場所が北海道だってこと、「サヨナラ」と残したメッセージの意味など。本当にシンちゃんはひかるのこと心配なんだな。やっと見つけたと思ったら、小土居くんと一緒で、ホテルに行ってどうしたとかいう話…。シンちゃんの想いが報われません。

 ひかるがお世話になった旅館で見つけたシンちゃんのメッセージ。それがひかるへの想いと一緒に綴ってあったこと。私は単純な読者なのでこういうの読むと簡単に動かされます。(笑) 徐々にシンちゃんのひかるに対する父性愛以外の男女としての愛情みたいなものが感じ取れるようになりました。

 2巻もひかるの勝手さに振り回されるシンちゃんが気の毒というかかわいそう…な展開でした。余談ですが、主人公のひかるちゃんの名は、タレントの西田ひかるさんから拝借したものだそうです。そういえば、なんとなく雰囲気も西田ひかるさんぽいなと思うのは私だけでしょうか。物語の中で出てくる人物にも西田ひかるさん好きってキャラがいて、上田美和先生が西田ひかるさんお好きなのかも?


 3巻  1992年10月 発売

 [ 第1部 つづき ]

 小土居君とホテルで一夜を共にしたことをシンちゃんに聞かれてひかるちゃん大ショック。いや、もっとショックなのはシンちゃんだと思うけど… シンちゃんが小土居くんの胸ぐら掴んで怒ってますが、仮にも教師と生徒。いくら恋敵といえども、先生が生徒を殴るなどの暴力沙汰が学校にでもバレたら大変です。(汗) 明智先生ならそういうことわかってそうですが、今回小土居くんに煽られて、しかもひかるのことなので理性が飛んでしまったようです。
 でも、明智先生への小土居君の言葉、「ひかるちゃん取られて悔しがるんだったらなんでもっとつなぎとめておかなかったのか。不安にさせるから自分(小土居)みたいな男につけこまれる。」っていうのも一理ありそうです。シンちゃんへの愛に気付かないひかるの方が責任大きそうだけど、それでも二人の問題だから。ひとりの女生徒をめぐって先生と生徒のバトルというのも面白く、今回の明智先生と小土居くんのやりとりはこの種の作品テーマの醍醐味かもしれません。

 自分の過ちに気付いて岬から飛び降りようとするひかるに、シンちゃんの「愛してる」という言葉。シンちゃんの愛に確信が持てなかったひかるには最高の言葉だっただろうし、私自身もシンちゃんのひかるへの愛に半信半疑だったのでこれでようやく私の気持ちも晴れた感じです。
 なのに、岬から足滑らしてひかるを助けたシンちゃんが生死をさまようことに… いや〜ん!(涙) 最後までシンちゃんが惨すぎるよ…(涙) すべてはひかるちゃんのかけおち騒動がまいた種。だからなのか、あんまり感情移入はできませんでした。人によっては勝手なひかるちゃんにイライラすることでしょう。

 意識不明の明智先生に「あんたが死んだらだれがひかるを守るのか!」、「自分とひかるのはなにもなかった」って取り乱ていた小土居くんだけど、完敗したと認めるようでなんだか私の眼にはカッコ良くうつりました。

 シンちゃんは無事に意識が戻り、ひかるも反省してシンちゃんの神戸行きを応援しますが、先生は教師廃業宣言してひかるとやり直そうと誓います。なんだけど、明智先生の辞表が理事長に破かれたということは、シンちゃんは教師を続けられるということですよね。神戸の学校には違う先生が行くことになったそうですが、これって全部スタートへ逆戻りじゃん?英学園で教師をするってことはまた葛藤するんじゃないの?という不安を残して第一部終了です。



 [ 第2部 ]

 ぎゃ〜!シンちゃんに隠し子ー!!オドロキ!!予想しなかった展開だわこりゃ。 大学時代の先輩で昔の彼女とかいう女性・新庄亜矢子が教師として学校に現れ、小さい男の子連れで、「あなたの子よ。認知してほしいの。」だって! キツイなぁ… ただでさえ昔の彼女出現で不安がってるひかるちゃんなのに、そこに追い打ちをかけるかのようにして隠し子発覚なんて…シャレにならんよ。晋平はもう終わっていると言っても、子供がいるんじゃ話は別。ただね、何年か経って急に現れるのは胡散臭い話のような気もしますが…
 ひかるに対抗意識メラメラ。子供を認知してほしいがために、晋平を利用してひかるにいろいろとけしかけてきます。なんかや〜な感じの女性です。手強そう。プライド高そうで強引そうだし。

 ひかるの交友面では、ルームメイトの園子とお互いの誤解が解けたようで安心。明智先生の結婚指輪とひかるのネックレスについている結婚指輪が同じで、二人が結婚していることにも気付いたよう。彼女がきっと今後のひかるの友人として、先生との仲も含めサポートする役割になりそうです。


 4巻  1993年2月 発売

 [ 第2部 つづき ]

 ドシュラ〜な展開になってきました。ひかるを呼び出して子供の存在を悪意を持って知らせたり、明智夫妻の離婚届見つけて勝手に押印したり… よその夫婦の離婚届に細工したのはさすがにひきました。これはヒドイ。このヒト怖い。女というのは実に恐ろしい…。さらにそこに、北海道でひかると晋平の絆を見せつけられて失恋したはずの小土居くんが戦線復帰宣言!で四角関係か。校内で明智先生と新庄先生が二人でいるところをキャッチされて、これで離婚は決定的か!?みたいな感じで終わってますが、結末は予想できたとしても途中の展開がまったく読めないです。どうなることやら。

 シンちゃんの葛藤がこれまたリアルっぽそうです。昔真剣に付き合っていた以上認知を考えないといけない、でも、今愛しているのはひかるだけで、ひかるの意思を無視することはできない…だけども、勇太(子供)も見捨てられない… ひかるから突き付けられた離婚届に名前は書いたけど、どうしても判を押すことができずに苦しんだり、自棄酒飲んでるシンちゃんに胸が締め付けられる思いでした。

 ひかるがシンちゃんに愛を乞うシーンで、シンちゃんは「まだ抱けない」と言ってましたが、それはひかるの夫である前に今は教師としての立場があるということですが、私が考えるに、そんなやけな気持ちで抱く方・抱かれる方もすっきりしないと思うのは私だけでしょうか。
 アヤコを部屋にあげたときに、どうしてひかると一緒に寝ないのかと問われ、「一度一線を越えて踏み込んで自分の気持ちが抑えられなくなりそうで怖い」とやはり教師という立場から自制心を保ってるシンちゃんは見た目通りの紳士的人間だなと。別にひかるのことが嫌いとかそうことじゃないんですよね。
 だけども、ひかるは「認知は認めない」とかまた駄々っ子になっちゃって、シンちゃんが苦しんでるのもわかろうとせずに愛されようとしてる。この子はホントワガママというか何というか… ただ、今回はシンちゃんの隠し子騒動でひかるが傷つくのは仕方のないことでもあり、とても難しい問題だなと。

 はっきり言って、私は勇太がシンちゃんの子だとは思ってません。たしかに見た目はシンちゃんに似てるんですがね。ひっかかる点というか、気になるところがいくつかあるので。それは5巻のレビューで書きたいと思います。


 5巻  1993年7月 発売

 [ 第2部 つづき ]

 あ〜、よかった〜!勇太はシンちゃんの子ではなくて。アヤコがシンちゃんと両天秤にかけたというもうひとりの男性との間にできた子でした。 ほほぉ。やっぱりね。最初に佐々木勇司という名前を聞いたときに、なんとなくそうではないかと思ってました。勇太と勇司。それに、血液型の説明してましたけど、そんなのウソつくことぐらい簡単にできますし。戸籍だってアヤコの手にかかれば細工だってできそうだし。

 アヤコは勇司に裏切られたと思っているようだけど、そうじゃなくて誤解が解けて、佐々木家に勇太を認知してもらって、明智先生との誤解も解いて、学園さってめでたしめでたし。気分はすっきりしましたが、やっぱりあの亜矢子って人のやり方は許せんかったなぁ。
 もし、ひかるとあのまま離婚してて勇太を認知していたらどうなっていたんだろう…ってことをたまに考えます。もしそうなってたとして、必要に応じて勇太の面倒はみるだろうけど、アヤコ相手に再婚するのは考えにくいかな。なんて、どうでもいい想像でした…(笑)

 シンちゃんが勇太を認知して、ひかるに離婚届を託して、ひかるもまた小土居くんと一緒に北海道で二人の仲が本当に終わってしまうギリギリでしたが、ひかるがマキさんの教えに大人になってくれてよかったよ。離婚にまでなってもシンちゃんは最後の最後までひかるのこと心配してるもん。シンちゃんの想いも報われるってもんです。

 そして、今まで教師の立場を守って距離を置いてきた晋平ですが、その思いがひかるを苦しめていると知り、ついにひかるを抱いてしまいました。まぁ、夫婦なので別にいいと思うけどね。そんなこと学校にバレやしないし。夫婦でプラトニックな関係というのも距離があるし。やっぱりどんな紳士な人でも理性を保てなくなることはあるんだな。



 [ 第3部 ]

 ひかるちゃん高校3年生になりました。第2部からおよそ1年。シンちゃんの隠し子騒動が解決し、二人の結婚生活は順調のようで、冒頭からひかると晋平のラブラブモード全開でした。初めて晋平がひかるを抱くまで別の部屋で壁を隔てて寝ていた二人も、今や一緒に寝るようになり、描かれなかった空白の間に二人がすっかり夫婦らしくなっていました。

 しばらくは学校生活での些細な問題が中心と思っていたら、なんと、ひかるが妊娠!! そうきましたか〜。ほかの教師・生徒モノでも妊娠騒動はありますが、二人の場合に男女の情事的なことが描かれたのは2部ラストだけなので、いきなりでびっくりしました。そういう夫婦間があった意味も含めて空白の1年があったのかもしれないですけど。ひかるの高校は男女交際禁止。それが妊娠だなんて。バレたら大変な展開になりそう。夫婦なので妊娠はおめでたいんですが、二人は教師・生徒でもあるので素直に喜べないんですよね。これも生徒と先生の恋愛モノの課題のひとつかなと思います。

 新キャラとして登場したひかるのクラスメイト・沖野優実。どうやらシンちゃんに好意を寄せるようになったみたいで、先生の家にひかるが出入りしていることを知り、なんとなく3部ではこの子がいろいろひっかき回してくれそうな予感がします。


 6巻  1993年11月 発売

 [ 第3部 つづき ]

 ひかるとシンちゃんの恋を綴った小説が大賞に輝き、一躍脚光をあびるひかる。出版社のコンクールに応募して大賞を取るとあっという間に小説家になれるもんなんですね。自分の知らない世界なのであっという間にひかるが小説家になったことが信じられないぐらいですが、別にひかるが小説家になることがこの作品のテーマじゃないのでとくに気にすることはなく。

 クラスメイト・優実の密告により、明智先生とひかるの結婚がついにバレしてまい、明智先生は責任を取って北海道の高校へ転勤させられることに。それを知ったひかるが校内でシンちゃん見つけて泣きわめくんだけど、そんなことしたらまた騒がれるのに… 「どうして一緒にやめようって言ってくれないの?」とまた勝手なこと言ってるよ。相変わらずひかるはよく泣く子です。
 晋平はひかるが妊娠していることをようやく知り、一緒に連れていくことを決意。またかけおちパターンか。結局ひかるは多々羅さんの助けと言葉でかけおちはなかったんだけど。でも、多々羅さんの言葉を素直に受け入れて逃げずに戦う、自分たちのためにもシンちゃんとの一時的な別れを決意したひかるは大人になったんだなと思います。

 残念ですが、小土居くんはこれで本当に失恋決定…。その前から失恋ではあったけど、結婚生活が順調な上にひかるのお腹の中に晋平の子供の命が宿っているとなればさすがに二人の間に割って入る余地などどこにもなさそうです。相当ショック受けてましたね。本当にひかるのことが好きだったんだなぁ。それでも、晋平とかけおちするひかるを報道陣から守って、彼のところまで送り届けようとする小土居君はかっこよかったですね。それでこそ男だと思います。
 明智先生の方も、全部優実がやったことだと知っていても何もいわず、大人な対応を取ったことも素敵だったなぁ。シンちゃんはもともとそういう性格が伺えるけど、自分が不利になった立場でも相手を責めないなんて大人すぎるよ。相手が生徒だからかな。

 自分は受験ノイローゼだったりレイプにあったりして不幸の優実が、明智先生と結婚して小説家になって幸せの絶頂にいるひかるへの復讐劇が始まります。ひかるの秘密を出版社に密告して、ひかると晋平のかけおちが失敗するように画策したり。受験ノイローゼに苦しんだときはメガネかけて地味なイイ子ちゃんだったのに、イメチェンして悪そうな顔つきに変わった豹変ぶりがすごい。優実は明智先生のことが一応好きなわけで、女というのはやはり男が絡んでくると気が狂うというか怖くなる生き物なんだな…


 7巻  1994年3月 発売

 [ 第3部 つづき ]

 ひかるとシンちゃんが離れ離れに… ひかるは自分たちの愛を小説で証明するために頑張るんだけど、本当はシンちゃんがいなくて苦しくて何も書けなくて、優実に階段から突き落とされて流産の危機になり、世間から白い目で見られて、多々羅から利用されていることに気付いて北海道のシンちゃんに会いに行くんだけど、身重で無理がたたり倒れて、それでもまだ頑張ってとうとう本当に流産…。 一気に不幸のどん底へ落とされたひかるちゃんを見ていて辛かったです。

 一方、遠い北海道のシンちゃんもまたひかるのことが心配ですぐにでもそばにいってあげたい気持ち、淫行教師呼ばわりされ、切迫流産のひかるの身を案じ、倒れたひかると仙台ですれ違いっているんだけど気付くわけもなく、シンちゃんのひかるちゃんへの愛がひしひしと伝わってきます。

 シンちゃんが東京に戻ってきてもすぐにひかるを見つけることができず、ようやく会ったのは北海道の病院、面会謝絶の部屋で意識のないひかる…。シンちゃんの願いもむなしくひかるは流産。切なすぎる…(涙) 北海道と東京の往復で大捜索だったのに、目覚めたら記憶喪失で15歳の頃のひかる、つまり自分と結婚していた頃以前のひかるになっていたなんて、シンちゃんが報われないよ。かわいそすぎる。
 見舞いにきた多々羅に「ひかるにはもう関わらないでくれ…」というシンちゃんの気持はわかりすぎるくらい。自分と会えないように仕組まれて、無理がたたって流産ですから。意識が戻らないひかるのことをどんな気持ちで待っていたのかを考えると私も胸が苦しいです。

 とにかく7巻は悲運の連続。ひかるがかわいそうで胸が張り裂ける思いでした。お互い想って会いたくてもなかなか会えず、ひかるのシンちゃんを想う気持ち、遠くの地からひかるを想い続けるシンちゃんの二人の愛に胸がキュンとなりました。ひかるとシンちゃんの幸せを願わずにはいられません。


 8巻  1994年6月 発売

 [ 第3部 つづき ]

 自分が子供を産めない体だと悲観したひかるが、女笛岬へ行ってはやまろうとします。それをシンちゃんがなだめるというのは、第1部で逃避行したひかるが自分の過ちに気付いてシンちゃんがなだめる…というのと同じ展開。ただ違うのは、今回はシンちゃんも無事に助かったってこと。ひかるはこの思い出の場所であった出来事が同じだとわかって無事に記憶を取り戻します。シンちゃん生きてて良かったよ〜。

 その先はハッピーエンドに向けて物語は動き出します。小土居に責められ自分がしたことの過ちに気付きひかるに謝罪する優実、園子が小土居を見直し始めたこと、そして、ひかるが立ち直って学校に戻って小説を再び書き始めたこと。あんなにシリアスでド修羅な展開だったので、これぐらいの清涼はなくっちゃね。

 ひかるは無事に高校を卒業したんだけど、まさかシンちゃんが教師やめちゃうとは。卒業式の日に学校までひかるを迎えに行って「これからは教師と生徒じゃない。胸を張って夫婦だって言えるんだ。」 長かったけど、ようやく二人が本当に夫婦生活を送れるんだと思うと私もうれしいよ。感動でした。

 その後の二人。ひかるの小説の筆者近影の背後に見える「明智道場」の文字。そういえばシンちゃんの特技が剣道だということを思い出し、道場開いて子供たちに教えているのでしょうね。その後の番外編に登場するシンちゃんが子供のころに通っていた明智道場と造りが同じようなのでお父さんの道場を継いだと解釈してよろしいのでしょうか?ひかるとシンちゃん、シンちゃんの教え子たちの写真がこの物語のハッピーエンドを象徴しているようです。

 ひかるが出した「oh my darling」というタイトルの小説は、作中の読者が読んでいたひかるとシンちゃんの愛の物語をリアルの世界の私たちも一緒に読んでいたということでしょう。


 さて、作中ラストの筆者近影の写真に写っている、ひかるが抱いている赤ちゃんは誰なのか?という質問が多くあったそうですが、赤ちゃんの正体は…もちろん晋平とひかるの子供です!7巻で登場した女医さんは「もう妊娠は望めない”かも”しれません」と言っただけで断定はしておりません。このことに関してはその後の番外編を読み進めていくときにおまけコーナーで上田先生が言及してます。
 私はね、最初見たときに養子かなと思ったんですよ。シンちゃんが剣道教えてる子供達と一緒に写ってたので。でも、いろいろ考えたら、もし養子だったとしたらもっともそれらしきヒントがほしいよな思い、普通に考えたら二人の子供かなって思えてきました。でも、女医サンのセリフにはまったく気付きませんでした。ひかるが小説家になって、シンちゃんが得意の剣道を教えて、流産を乗り越えやっとひかるが晋平の子供を産み、ようやく普通の夫婦になって、あの写真に写っている笑顔の数年後の二人が真の意味でのハッピーエンドかなって思います。



 [ 番外編 「〜ボクがキミを好きな理由〜」 ]

 シンちゃんの受難な子供時代編です。ひかるちゃん誕生、ひかるの両親の事故死、シンちゃんの家庭の事情、剣道を習うシンちゃん、そして、シンちゃんがひかるを守ろうとするに至るまで。これを読むと、本編がもっと読みやすくなるかもしれません。ちびシンちゃんがとにかくカワイイです!☆