otona・pink
 シリーズ…マーガレットコミックス
 著者…佐藤ざくり
 出版社…集英社
 コミック巻数…全2巻
 発売年…2007年〜
 掲載誌…マーガレット
 参考リンク…集英社BOOKNAVI



■ ストーリー ■
 瀬能みくにはごくごく普通の高校生。彼氏もでき楽しい学生生活を送っていた。ある日、母親が南極に転勤することになり、ひとり日本に残るみくにの同居人兼保護者として担任の西園先生が家にやってくる…


■ 総評 ■  ★★★☆☆

 1巻は千穂との恋路を邪魔されて先生に対して嫌いな気持ちがあったみくにが、2巻はガラッと変わって先生に対する好きという気持ちで切ない感じの進行でした。最初の頃は千穂と先生のバトルと言ってもあまりなかったし、先生を同居させるとか、彼氏が転がりこむとか、あまり好きではないような展開で、そこまで面白くは感じなかったけれど、みくにが先生を好きだと自覚してからの2巻は、先生の失踪とか梨さんの存在とか壮絶で、けっこう面白くて次が気になる展開でドキドキでした。
 2巻で終わったのが残念ですが、先生・志加さん・梨さんの出会いを描いた番外編や、その後のみくにと先生のエピソードなど、おまけが充実しているのが良いです。


■ 登場人物 ■
 
瀬能みくに
 高校生。親が南極に転勤し、担任と暮らすことに。
 
西園 与
 みくにの担任兼同居人。
 
藤井千穂
 みくにの彼氏。


※ここより下はネタバレとなっています。了承したうえでお読みください。


 1巻  2007年11月22日 発売

 [ 第1話 ピンキッシュルーム ]

 主人公は関西弁を話す女の子。舞台は京都です。ヒロインが関西人と言うのは今までの先生生徒モノの中でもなかったケースですね。関西弁を話す人を漫画で読んだりすると、男なのか女なのか区別がつかなくてわかんなくなってくる… 基本的に私の地元は方言はあっても語尾が変わるくらいだし、なまりはほとんどなく標準語なので、地方の言葉はきいていてさっぱりわかりません。

 ヒロイン・瀬能みくには母親と二人暮らし。母は大学の研究室につとめる生物学者。ペンギンの生体について調べてますが、今度南極へ行くことになる。みくには日本に残れるけど、母親が見つけてきた同居人兼保護者と一緒に暮らすことになる。なんとその相手が担任の西園先生。ありゃりゃ… 担任と二人で暮らすだなんていきなりとんでもない展開になってますねー。しかも、みくにと西園先生は別に仲がいいとかそういうことではなくて、むしろ自分の恋路を邪魔されて嫌ってる感じ。そんな人と一緒に住むなんて、みくにの生活はどうなることやら。
 先生生徒ものなのでラストはもちろんハッピーエンド?かなと思いますが、この漫画はみくにと先生が同居生活をしていく中での物語が展開されるということでしょう。今は険悪な二人ですが、ラストはきっと…
 ただ、今みくには藤井千穂という彼氏がいる。彼氏がいる中で先生に惹かれちゃうの?たいていヒロインに彼女がいなくて先生に惹かれていくのが定番ですが、すでに付き合っている人がいて先生に気持ちが傾くというのはあまりないので、その過程がどうやって描かれていくのか楽しみながら読みたいと思います。ってまぁ、ハッピーエンドになるかなんてわからないけど、先生生徒モノでバッドエンドは少ないので、読む前からハッピーエンドになるまでのことを考えてしまいます。



 [ 第2話 恋はたたかい ]

 早速始ったみくにと西園先生の危険な(?)同居生活。みくにの方は「ドアホー!」的な感じですが、先生の方はみくにをからかいながら生活を楽しむ感じ。先生と同居なんて恋人の千穂に知られたらと思うと不安なみくにに対して先生は「3か月どころか3日で捨てられるんじゃないか?」と嫌味を吐き、まるでみくにの恋の破局を待っているかのよう。「恋愛なんかに振り回される人間なんか不幸になればいい。」発言、他に好きな男ができたり、価値観のずれ、環境の変化で高校生の恋愛は短命とか、まるで経験あるような口ぶりですが…って経験?もしかして西園先生、過去にそういうことがあったのでは…?恋愛ごとに妙につっかかってきてますからね。

 千穂は学校でみくにが先生といるところを見てしまって、みくにのおかしな様子に疑問を抱き始めます。自分に隠し事をして、「こんなの付き合ってるなんて言わない。」と、さみしい様子。だけども千穂はみくにを想ってくれてて、そんな千穂にウソついていることがみくには許せなくて、早くも二人の恋の行方があやしくなってきましたよ。



 [ 第3話 訪問者 ]

 西園先生と一緒に暮らしてることを千穂に正直に話したみくに。当然びっくりはしていたけれど、母親が決めたことならしょうがないとあっさりあきらめてたけど、いくら保護者代わりだからといって男の担任ということに何も感じないのかが不思議ですねー。みくにがウソをついていたことにショックで告白を後悔していたかのような口ぶりでしたが、それでもみくにのこと嫌いにならないと言ってくれた千穂はいいやつです。
 先生のことはなんとかすると言っていた千穂が、なんと、みくにの家にやってきて自分も今日から一緒に暮らすと言いだしました。ぶっとんだ展開にちょっとワクワクです。

 西園先生は自分の家のように遠慮せずに使ってますが、どうしても今お金が必要だそうで、先生の過去になにかあるのかも。



 [ 第4話 はじめての夜 一 ]

 みくにの家に千穂が転がり込んできて、奇妙な三角関係&同居生活が始まる。先生は二人の中でエロい男という認識になっており、みくにを守ることが目的の千穂。先生VS千穂のバトルはとりあえず家にあがりこんで早速千穂が先生を殴るくらいのところまで。

 先生のこと嫌がっていたみくにだけれども、千穂に殴られて手当てはしてあげるんだから、一応先生はみくにに心配くらいはされてるみたいでちょっと安心?時折見せるみくにの先生に対する嫌いとは違うような表情。まだはっきりとは出ていないけれど、みくにの中で先生に対する違う感情が芽を出し始めた感じかな。
 千穂に殴られて口の中が切れてしまった先生。血が苦手らしく、血をみたらかなり動揺している。先生のことまたひとつ知る。

 一方、二人きりとなった千穂とみくにがいい感じに。ということろで4話終了。先生もいるし危険だぞー。このままうまくいく…はずがない??



 [ 第5話 はじめての夜 二 ]

 千穂がみくにを犯そうとしましたが、みくにの悲しそうな表情を見て自制心を保ちました。おまけに先生に見られて、やっぱりね。反省している千穂のそばでネコちゃんたちが発情期。(笑) ネコの発情期って泣き声がすごいよね。盛りの時期になると発情したネコがウチの庭にいて夜とかすごいです。泣き声とか動いている音とか。
 みくには好きな人に触られるのは嫌じゃないと千穂を擁護していたけれど、先生の前で泣き出してしまい、彼女がまだ千穂に対して男性的意識が低いのかなと。頑張って千穂を好きになっているような感じがします。



 [ 第6話 彼女 ]

 先生には彼女がいるよう。まさかと思っていたみくにだけど、長い付き合いの友人も証言していることもありどうやら本当みたい。ただ、その彼女の様子がはっきり描かれていないのがあやしいです。
 先生のことを気にかけるみくにに千穂は、みくには先生のことが好きだと言います。みくには自覚していないみたいだけど、千穂はみくにのことが好きだからこそそういう気持ちに敏感になりやすいのかな。

 先生の友人登場で暴かれた西園先生の生活。実は小説を書いているそうな。『女教師夏香 愛欲の放課後シリーズ』って、ちょっとタイトルから変態な感じが… 教師に小説家という副業。実際にいるかはわからないけど、漫画のキャラとしては意外といるんですよね。普段堅物だったり真面目そうな人が、実は本当は危険な香りがするとかね。



 [ 第7話 Raining ]

 みくにが他の男に心変わりしていくのを見るのが辛くなった千穂は、みくにを突き放します。でも、きっと千穂の中ではまだみくにが好きだという気持ちは残ってるんだと思う。みくには千穂が好きなわけだから悲しむのは当然のことだけれども、先生の友人・志加の「おいていかれたんじゃなくておいかけなかった。」というスルドイ指摘。こういう場面って経験ないのでわからないけれど、本当に好きならやっぱり追いかけるのかな?だとすると、みくにの中で千穂と先生とで気持ちが揺らいでる?

 泣いているみくにが「この家に来たのがなぜ先生だったのか。先生じゃなかったら…」という気持ちが複雑。この言葉にどんな意味が込められているのか。本来なら、千穂との仲に亀裂が入ったのは明らかに先生のせいだからもっと泣いて先生に対して怒りをあらわにしていもいいはずなのに、そんなに反発しなかったのは、先生への特別な感情が交じっていたりするのでしょうか。
 みくにの心情「雨の音がやたらとうるさくて。」、この雨という背景はドラマなどでも悲しい気持ち、すっきりしない気持ちなどを表現している重要な役割。きっとみくにの中でも雨というものが彼女の気持ちを表していて、その雨の音が無情に流れることで、みくにの心にぽっかり穴があいてどうでもよくなってしまった心が表現されているのかなと思います。


 2巻  2008年2月25日 発売

 [ 第8話 先生の眼鏡 ]

 ついにみくにが先生を好きになっていることを自覚。千穂にフラれてどうでもよくなっていた時すべてを先生に委ねた。だけど先生は「やけになっている女となんかしたくない。」とみくにを拒む。それでも、みくにがやけになって風呂場で頭を冷やす無茶をし、危険になったところを先生は助けてくれた。その時みくには自分が傷つかず守ってくれたのは先生のおかけだと気付き、先生に対しての気持ちに目覚める。うーん。わかるんだけど、私の中では何かが足りないような…

 自分を助けてくれた先生の眼鏡がくもっていることに気付き、メガネを外したみくに。そのまま湯船に沈んでいった反応は…?先生の眼鏡を取った姿がカッコ良くて先生を好きだと言う気持ちが強くなったとかそういうことでしょうか?

 学校で千穂を呼び出したみくに。この展開は…先生が好きなこととかそういうことを伝えるのか?気になるところで8話終了。この漫画終わり方は巧いな。必ず気になる展開を残して読者を楽しませてます。



 [ 第9話 未来 ]

 千穂を呼び出して先生が好きだとはっきり伝えたみくに。千穂は逃げずにちゃんと聞くと言ったものの、やはり面と向かって言われると相当ショックで、納得できなくてみくにを襲う。今度は本気の千穂だけど、みくにはこんなのは嫌だからと今度ははっきり千穂を拒絶します。前回犯されそうになったときはそういうことがまだ苦手意識とか千穂とそういう関係になることに覚悟ができていなかったところがあったんだろうけど、今度は千穂に対してそういうことされるのが嫌、つまり男性意識がなく、先生への気持ちがある変化だと思います。それでも千穂はみくにと別れるつもりはないようで、千穂、先生、そしてみくにの三角関係はとてももつれた状態になってしまい、みどころとしては山場を迎えるあたりかな。

 先生が好きだと自覚したものの、先生は自分を好きになってくれる自信がなくて、先生との未来なんて想像できなくて、自分がもっと恋愛上手だったらと思うみくに。千穂が好きで千穂と付き合えることがうれしかったはずだったみくにだけれど、みくにが千穂に対する抱いていた感情は憧れとか理想だったように思います。もちろん好きになったらそのままゴールインということもありますが、好きだったけど付き合ったら違ったみたいなこともある。それはそういう人が理想であるけれど、現実には合わなかった。みくにはこっちじゃないかなと思います。理想と現実は違うこともありますからね。
 先生しかいない職員室で、先生にキスしてしまったみくに。みくにに対する先生への気持ちがどんどん大きくなっているんだと思います。だけど、みくにの知らない先生の彼女の存在。みくににとって先生の彼女がいまいちばんネックな存在になっている。先生は彼女のことを話したがらないし、写真もみせようとしない。この謎の彼女の存在は今後の二人の関係を左右するのでしょうか。



 [ 第10話 キスはいつも苦い ]

 先生にキスしてしまったみくにだけれど、先生はなかったことにしようとする。みくににいないタイプだから勘違いしているだけと先生は諭しますが、みくにはそれなら一生勘違いしておくと、先生に対して本気の気持ちをぶつけます。それでも先生は、君を好きになることはない、好きだという感情を使いきってしまった、梨以外なにもいらないと彼女一筋でみくにの失恋が決定的に。
 それでもあきらめられないみくには梨に会わせてほしいと、先生の友人・志加に会いに行きます。みくにちゃん、先生の彼女と直接対決!? 修羅場にならなければいいのですが、今までその彼女の顔すらも出てこなかったこと、前の巻でちらっと出てきた病院、何かある気がします。

 千穂の方はみくにのことあきらめないといったけれど、何かをふっきったのか髪を切ってきました。フツー、恋愛沙汰でヘアをカットとなれば失恋とかそういうことが絡んでそうなんですが、先生のことあきらめらないみくにに背中を押してあげるだとか、もしそれでもダメなら一緒に泣いてあげるとか、みくにのこと応援している立場になっている?



 [ 第11話 傷 ]

 やっと梨さんのことが明らかになりました。先生と梨さんの出会いは大学生の時。二人は結婚まで約束してしていた。だけど、先生がプロポーズした日に梨さんは自殺した。だけど死に切れなくて病院の管につながれたままずっと眠り続けている、という人生の落とし穴が先生をつらく深く傷つけていたのでした。
 先生はその日から何もかも捨てて働いて梨さんの医療費を払っている、だからお金が必要だとか言ったんですね。恋愛なんかに振り回されればいいと思っていることも、おくてだった先生に対して行動的だった梨さんに振り回されて、結局自分は置いていかれて寂しい思いをしていた。だからみくにと千穂の恋がつぶれるようなことを言った。みくにのことを拒んだのも梨さんと同じように捨てられるんじゃないかという思いがあったのだと思います。先生を苦しめていのはそういった幸せだったのが一転して不幸のどん底に落とされたという過去があったということで、この回は暗い話になりましたが、先生の言動が今と過去にはっきりつながったとてもわかりやすい説得シーンでした。

 すごく愛していたのに先生は梨さんの病室に入れないまま、顔が見られないままで、梨さんを憎んでいるのだとか。愛が憎しみに変わる。なんか信じられないような展開だけれど、私も愛が憎しみ変わるくらいの恋愛をしてみたいものですね。(おい、笑)

 さみしいくてどんな卑怯な手を使ってでもみくにを利用したくなるという先生の気持ちに応えてあげたみくに。先生をひとりにさせたくないほどみくには先生を好きでいる。そこで先生の気持ちが揺らいだのか、二人は一線を越えてしまいます。が、次の日、先生はみくにの前から姿を消す。壮絶ー!! そんなところでまたまた終了。次回はいよいよ最終回。二人がどんな結末を迎えるのか目が離せません。



 [ 最終話 そして、光 ]

 失踪した先生からみくにに電話が。梨さんに会ってあげてという言葉で病室に向かった先生。なんで逃げたのか、本当は愛してなかったとか、今まで思っていたことをぶつけましたが、みくにも言っていたように梨さんは先生のこと愛していたと思います。ただ、突然怖くなったり自信がなくなったりすることがある。そういう気持ちに駆られて自分を守ることが今回の行動につながってしまったのかもしれません。

 前回は壮絶な展開でしたが、その後、先生はあっさりとみくにの前に戻ってきまして、みくにに好きだという気持ちを伝えてハッピーエンドを迎えます。二人で梨さんのお見舞いに行くという、梨さんはまだ一応この世にいますのでちょっと切ない感じもしますが、一度あった出来事から修復するのは容易いことでもなく、先生にとって梨さんのことはもう過去になってしまったんでしょうね。先生のことを愛していたとしても、逃げたということには変わりありませんから、もし梨さんが意識を取り戻したとしてもそんな人ともう一度やり直そうという気持ちを持つのも難しいのかも。みくにと新しい光を見つけた先生には、彼女といつまでも幸せに暮らしてほしいなと思います。



 [ はつ恋 otona・pink番外編 ]

 志加目線の番外編。先生・志加さん・梨さんの出会い・同じサークル・大学時代のエピソードです。3人が出会って、やはり西園先生は振り回されるタイプで、だけどもいつの間にか仲間のように一緒にいる3人。そんな3人の青春時代が爽やかに描かれています。
 志加さんがゲイということ、わからなくもない… 梨さんは行動的というだけあって、番外編ではじめてその姿がはっきり描かれたけど、予想通りおとこらしい人でした。志加と仲良くしているけど、実は与(西園先生)のことが好きだった。だけども、志加もまた与のことが好きだった。でも、二人が幸せならそれでいいと、彼の恋は終わりを告げる。

 先生と梨さんとの出会いを描くこともひとつの目的だったんだろうけど、それ以上に3人の仲良しぶりが強調された楽しいお話でした。



 [ otona・white ]

 その後のみくにと先生の様子が4Pほど。先生は白が嫌い。昔の嫌なことを思い出すから。嫌なことというのはおそらく梨さんの自殺でしょう。だけど、頬を触られて白い肌を色づかせるみくにを見て白を好きになるというエピソード。
 大雪の日、みくにがいなくなって不安になる先生。雪は白く女性の肌をイメージさせる。梨さんが自殺したのはお風呂場かな。湯船に浸かったまま死んでいたということか。だからみくにがいないだけで不安になるのに、さらに雪という白いもので先生の不安をさらに増幅させる。
 でも、結局みくには外で雪だるまを作って遊んでいただけだった。先生の気持ちを知らないで、先生に似ただるまを作って無邪気に遊ぶみくにに怒ったのは、それだけ心配して不安でもあったんでしょうね。そんな先生も可愛いです。

 とても短いストーリーでしたが、先生の気持ちや、この中で伝えたいことがはっきりしていてよかったです。先生だるまが可笑しかったけど似てました。(笑)