あい・ひめ〜愛と秘めごと〜
 シリーズ…フラワーコミックス
 著者…みつきかこ
 出版社…小学館
 巻数…全3巻
 コミックス発売…2006年〜
 掲載誌…ベツコミ
 参考リンク…小学館コミック




■ ストーリー ■
 両親の海外赴任中ひとり日本に残るまおは、ある日、桜の木の下で出会った男性と引力に引き寄せられるかのようにキスをする。もう一度会いたいと願うと、なんと「叔父」としてまおの前に現れる…


■ 総評 ■  ★★★☆☆

 主人公が不幸のどん底に落ちるような展開はなく、ある程度予想できる範囲内のエピソードが展開されて終了。それでも、まおや仁也のキャラクター性や心情などの描写が面白くて楽しめました。

 仁也と友人・悟っちがまおをめぐってもっと抗争を繰り広げるかと思いましたが、その様子は悟初登場の8話だけ。その後の悟はまおにちょっかいを出しているものの、まおを本気で口説こうとしているわけでもなければ仁也と争っているわけでもなく、ただ二人を見て楽しんでいるようでした。仁也VS悟のまおエピソードをもう少し期待していたのでちょっとガッカリ。ただ、みつき先生もそれに関して言及くださっているので、読者側も理解しないといけませんけどね。

 大人で余裕そうな仁也が実はまお以上にヤキモチ焼いていたり、スーパー天然のまおが仁也の心を乱したり、完璧に見えてムカデが嫌いというエピソードなど、クールそうにみえて同じぐらいに“かわいい”という性格が出ているのが仁也の魅力なんじゃないかと思います。エピソードの半分ぐらいは出てくる仁也の「大あほう!」や「馬鹿」発言も名セリフとなりつつ、それを聞くのも楽しみのひとつかもしれません。

 キャラクターたちのひとりひとりの活躍をもっとみていたい気もします。個人的には悟くんをもっと出してほしかったな。仁也をもっといじめてほしかったです。仁也みたいなクールなキャラにはいじめ役がいる方が面白くなりますから。
 一話完結パターンなので、もっと他のエピソードで深くしていくことも可能なはず。個人的にはお気に入りですが、すぐ読み終わってしまった物足りなさが残り、(良い意味で)もう数巻続いてほしかったなと思いました。



■ 登場人物 ■
 
高木まお
 高校2年生。両親が海外赴任のため、叔父の家で暮らすことになる。天然。
 
高木仁也
 まおの知の繋がらない叔父。ホテルマン。
 
森 粧子
 仁也の元彼女。同じ職場で働いている。
 
多岐川 悟
 仁也の友人で同僚でもある。ホテル内のカフェバー勤務。
 
高木 始
 まおの父。


※ここより下はネタバレとなっています。了承したうえでお読みください。


 1巻  2006年8月25日 発売

 [ 第1話 春の嵐 前編 ]

 桜の木の下で偶然出会って、引力に引かれるかのようにキスをして、後日再会したら姪と叔父だった!
という現実にもありそうな偶然な出会いと、いきなりそこでキスして別れるというちょっと非現実的?さ、そこにもって親戚として再会するという偶然にもありそうななさそうな設定が混在していて、いかにも架空の世界の発想ではあるけど、つかみはだいたいOK。この漫画の世界に引き込むには十分なプロローグだと思います。

 仁也はまおの叔父ということですが、歳が7つしか離れていません。叔父というよりは歳の離れたキョウダイ、またはイトコって感じなんだけど。まおパパと仁也は事情がって血がつながっていないということや歳が離れてまおに近いというのも大事な設定ですよね、きっと。

 まおが木に登って帽子を取ろうとするところ、女の子なのにちょっと野性的? 物語の主人公が、しかもイマドキの可愛い女の子が大胆にも意外な行動を取ってクスッとさせれたたけど、なんだかよかったな。



 [ 第2話 春の嵐 後編 ]

 意外と早くくっつきました。もう少し家族だけの関係でまおがドキドキするのかなと思っていたけど。「惚れさせたお前が悪い」ということは、やはりあの出会いは二人にとって運命だというべきか。面倒見のよいお兄ちゃんのような態度でまおに接していたけど、もう最初から捕まえることが前提でごっことしてからかっていたんだろう。

 しつけのし甲斐がありそうというのはどんな意味だろう。家族としてか男としてか。私は両方の意味合いが込められているのかなって気がするけど、後者の方が強そう。
 まおを捕まえたら口は悪くなるわ、お仕置きだとか、仁也の本性(?)が出た? ちょっと危険な感じの男の人!?



 [ 第3話 好きと言って ]

 熱出して寝込んでるまおのために仕事休んだ仁也。理由を“猫の看病”というのがクールな仁也には似つかわしくなくて笑えます。素直に家人の看病って言ってもいいと思うけど、ネコと表現する方が読者にキュンってさせられるかもしれません。でも、もし本当に仁兄が猫の看病してたら可愛いかも。(笑)
 そういえば、出会ったころにまおの行動をみてネコみたいと言っていたり、二人が出会ったのもネコの導き、その猫がいつのまにか仁也宅に入り浸っている、半裸見られて動揺してるまおのビンタをネコパンチとかわしたり、さりげなく猫を登場させるのがいいですね。

 まおは仁也が好きと言ってくれないことに不安になってますが、「惚れた」と言ってもらえただけではダメなんでしょうかね女の子は。男の人は「好き」なんて直接的な言葉を使うのは嫌がりますが、「簡単にほかの野郎に触られるな」とか自分の所有物のような独占欲むきだしになるんですよね。「お前は俺のものなんだぞ」なんて言葉はこっちが恥ずかしくなるくらいですよ。まおちゃん、これで安心ですかね。でも、「好き」の言葉がやはり一番のようだけど、手強い仁兄相手に言ってもらえるのか。ガンバレ、まお。



 [ 第4話 かわいいひと ]

 今回は仁也の気持ちわかるな〜。いくら相手が小さい子供で幼馴染というだけで何とも思ってなくても、恋人の目の前で疎外された話や仲睦まじそうにされたら誰だって嫌ですよ。それって同性の友達同士の間でも同じだと思うな。なんか小さい頃一緒にお風呂に入ったとか、ちゅってやるのはちょっとないよね。おかげで仁兄イライラ。(笑) 「大概にしろよ?」というのはもちろん央くんとのことだと思うけど、意地悪な発言でごまかしてしまうなんて素直じゃないんだから。子供がいる手前、大人気ない発言もできなかったかもしれないけどね。

 央くんが帰った途端、口が悪くなって本音吐き出して、やきもちやいていたことがまおに知られ、タイトルにもあるようにかわいいひと・仁也なのでした。

 かわいいといえば央くんかわいかったよ〜。まおの友達や仁也も言っていたけど、本当に犬みたいな顔と懐っこさでした。仁兄の「犬っころ」には笑えた。私は「わんこ」とか言うけど、仁也が言うとかわいい…(笑)

 仁也は添い寝好き?この一冊だけでも添い寝がすでに2回も出てきたよ。 お仕置きが添い寝なんてカワイイですね。(笑)



 2巻  2007年1月26日 発売

 [ 第5話 眠り ]

 出たぁ〜、元カノ! こういうのって、女の方が男を忘れられないとかいう流れになるのが少女マンガによくあるパターン。だけど、粧子さんの話を聞くと二人はビジネスで付き合ってたというのもありそうだし、きっぱり終わってる感じで、あっさり仁也とまおの応援側に。まおと仁也をふたりっきりにする入れ知恵をしておいて、今さら二人に何かある…という展開は考えにくそうです。

 寂しかった仁也の過去。女性と付き合うにも一定の距離を保って、特に特別な存在というのは作らなかったんだと思うな。でも、ひとりにならないと眠れない、誰にも寝顔なんて見せたことがない仁也がまおと一緒に添い寝する。仁也にとってまおが特別な女性になったことで、あんなに安心して眠っていられたんだと思う。皆勤賞だという仁也が添い寝でお寝坊だなんて、よっぽど安眠できたんだな。ぬくもりがあるっていいよね。仁也の寂しい思いを理解したまおの「一緒に寝よう」という言葉が仁也の心を溶かしていけば。冒頭の仁也の寝顔が可愛かったです。

 いつの間にか仁也宅の飼い猫になっているあのネコちゃん。姫という名前までつけてもらって、すっかり二人に可愛がってもらっています。



 [ 第6話 めざめ ]

 仁也が高木家の養子になった経緯が明らかに。仁也がひとりにならないと眠れなかったり、領域を作っていたのは、親の失踪、若い時から一人暮らしなど、独りに慣れてしまったこと、複雑な過去を抱えていたんだろうな。他人行儀で感情を押し殺していたという少年がまおをしかりつけている。かたくな仁也がやわらかくなったのはまおのおかげだなんて、まおが仁也に与えた影響はすごいんだろうな。

 だけど、まおと仁也は血がつながっていなくても一応家族。帰国してきた親に「兄妹」と言われ、うしろめたさがあることを改めて思い知らされます。仁也もまたまおとは家族だということをまおパパから認識させられます。だけど、それでもお互いのことを想って愛を貫こうと決心。キュンとさせられます。
 仁也が始から「(まおは)やらんぞ」と言われ家族だからとかわしましたが、まおパパは出来の悪い冗談だと言っても薄々何か感づいていたのかもしれませんね。

 最後のキスは、家族でもそばにいると誓った、覚悟を決めたような意味のキスでもあったのかなって思います。



 [ 第7話 夏夜のシンデレラ ]

 仁兄とホテル(仁也の働くホテル)でデート♪ 忙しいホテルマンなので、こういう時に家族の立場を利用して自分の職場でデートとは考えたな。別に言いふらさなくてもいいとは思うけど。(笑) でも、半分ぐらいは本当に社会勉強の意味もあるだろうから、デートと併せて一石二鳥。ドレスアップしたまおが仁也に手をひかれて(腕組みだけど)、高級ホテルでデートだなんて気分はまさにお姫様。読んだ私も胸がキュンってなりました。
 ネクタイ外した仁也もカッコよく。仁兄は何でも似合いそうな男だな。「絵日記の参考になるかな」という相変わらずの仁也の意地悪ぶりも好調。だけど、高校生に絵日記はないよね。(笑)

 前回同様、応援の仕方が過激な粧子さんの策略でホテル行きになった二人だけど、心の準備ができていないまおがパニック。仁也もなんとか自制心コントロールしてましたが、あのかわいらしい格好でよく頑張って抑えたな。報復という名のキスマークですっかり仁也に翻弄されているまおと、待っていると大人な発言したけど後悔して余裕がなかったり、イタズラする仁也がクスッとさせられます。やっぱり男の人はそういう生き物なんだな。(?) 仁也にお腹キスマーク付けられて、まおは泳ぎに行ったのか?気になるところです。(笑)



 [ 第8話 男のコの事情 ]

 新キャラ出ました。仁也のお友だち・悟くんです。仁也をいじめ倒すキャラのようです。個人的にはそういうキャラクター大歓迎〜♪まだ初回登場なのに、いろいろやってくれてます。もっと悟っちには仁也を困らせてほしいです!(笑) 悟っちの攻撃にイチイチ反応する(仕返し)仁也が面白くて。仁也の新たな一面発見です。

 どうもまおのことが気に入ったらしく、まおをめぐって仁也とバトル勃発か。仕事早く切り上げてまおと早速…と思ったら、「まずはお友達から」と一緒にゲーム…。見事なファインプレーでした。仁也にケータイのメモリーを消去されるという制裁にも負けずに闘志を燃やすことでしょう。まおの携帯番号とメアドはいつ盗んだのか。

 悟に振り回される仁也はお気の毒。まおは友達だからと思っていても、悟だって大人の男ですからいつ狼になるか… そんな気持ちを何もわかっていないまおにイライラ。悟といると知って慌てて帰ってきたり、悟が居候してからキスしてないだとか、余裕そうで実はヤキモキしっぱなしの仁也。でも、悟がいなくなったらまおと気持ち確かめ合ってホッとする仁也がかわいいこと。普段余裕そうな仁也が焦ってるのを見るのは楽しいな。(笑)



 [ 第9話 SEASON〜月花〜 前編 ]

 三者面談ということでまおの学校に現れた仁也。美形出現でやじ馬ぞろぞろ。事務の先生、まおの担任の先生、さらにはまおのお友達まで仁也のカッコよさにメロメロ。仁也のモテぶりはどこでもすごい。

 まおの天然ぶりもすごいな。テニス部まおちゃんの人気すごくて、いやらしい目で見てくる男子生徒もいるのに全く気付かない。話しかけれた男子を「知らない人」発言。久々に出た仁也の「あほう!」はもはや名セリフ。仁也の鋭い威嚇は効果抜群だけど、あんな無防備な状態を放っておいたら狼男が寄ってきそう。仁也の気苦労は絶えなそうです。

 最後、なんだかイイ雰囲気になった二人。まおからキスしたことなんて今まで一度もなかったような。仁也が今まで耐えてきた思いがついに報われる日が来たか?気になるところで前編終了。



 3巻  2007年6月26日 発売

 [ 第10話 SEASON〜月花〜 後編 ]

 ついに、仁也とまおちゃん結ばれました〜。翌朝目覚めたまおの体を気遣ったり、仕事よりまおが大事だってギュって抱きしめたり、もう仁也がまおちゃん大事にしすぎてるのが伝わってきて、なんだかあたしも幸せな気分にさせられちゃった。遅刻した仁也は何と言い訳したのだろう?
 小学館のコミックスってやりたい放題で、作家さんによっては結構具体的で生々しい描写がありますが、本作は少し抑えた感じで綺麗な仕上がりになっています。

 幸せの絶頂にいるまおが仁也を意識するのが可愛く、そんなまおに「一緒に風呂入りたかったのか」といつものようにからかって意地悪する仁也のオヤジ化した行動が面白く。

 二人だけの年越しに、初雪バックで窓越しに見えるシルエットの二人のキスシーン。10話は相変わらずの二人だけど、とにかく幸せなオーラに包まれたあったかいおはなしでした。



 [ 第11話 おくりもの ]

 バレンタインで仁也に贈るプレゼント資金集めのため、悟のいるカフェバーでバイトのまお。保護者として賛成しかねると反対した仁也だったけど、本音は保護者としてじゃなくて男として。まおが他の男といるのが嫌だったり何かトラブルがあったらと心配。女の子としては嬉しいかもしれないけど、それじゃ、まおはこの先ずっと働きにも出られないかもね。
 落ちてくる食器から子供をかばい、慌ててまおを担いで連れ出す仁也の行動からも心配していることが伺えるけど、まおは当然のことをしたまでかもしれないよ。まおよりも公私混同しているのは仁也の方かもしれません。

 仁也の喜ぶもの…とまおに「メイドさんセット」をすすめた悟ですが、ああいうナンパなキャラというのはイタズラでこの手のパターンがよく出てくるので、笑えたけどやっぱりかという気がして面白かったです。はたして、メイドさんセットは役にたったのか… 後日、仁也と会った悟くんの無事を祈ります。(笑)



 [ 第12話 弱点 ]

 仁也の弱点がムカデなんてかわいいなぁー。でも、可愛いっていうと、まお以外の人間は本当にお仕置きされそうで怖いです。(笑) ムダに足あって気色悪いのはよくわかるな。 ゴキブリ出てまおが絶叫する気持ちは個人的にはものすごく理解できました。

 ラブホテルを仁也のホテルと似てると発言するまおの天然ボケぶり、その話題に乗っかる仁也の意地悪ぶりは相変わらずです。ネコと会話が成立するまおってやっぱりすごいのかも。(笑)

 仁也は左利きだったのか。今頃気付いたよ。(遅) タバコ吸うのなんて利き手じゃなくてもできそうだけど(タバコ吸わないので知りませんが。)、利き手じゃないのに左手で箸を上手に使う人はそういませんから。



 [ 最終話 愛と秘めごと ]

 まおの両親が海外から帰ってきて、まおは仁也と家族だということに改めて思い知らされるわけだけど、仁也が養子縁組離縁で、ふたりは姪と叔父の関係から解放。もちろんそれはまおと結婚するため。血のつながっていない家族という設定でハッピーエンドにするならば予想できる展開。やっぱりそうきたかという感じで、まおの両親もあっさりOKして、大きな問題もなくラストまで進みましたが、無理なく収まるところに収まってすっきりした最終回ではあったかなと思います。

 二人のその後が4Pほど描かれてますが、結婚しても悟のまおに対するナンパ癖は変わっておらず。(笑) 二人の子供、尚也とさくらも出てきて続きを望むファンには嬉しいサービス。尚也の悟に対する「えろじじい」発言は、おそらくママに手を出そうとしてくる悟に技も伝授してそう言えとパパ仁也が仕込んだことでしょう。