シュガー☆ファミリー
 シリーズ…花とゆめコミックス
 著者…萩尾 彬
 出版社…白泉社
 巻数…全6巻
 コミックス発売…2006年〜
 掲載誌…LaLa
 参考リンク…s-book.net Library Service




■ ストーリー ■
 両親の再婚で高校の教師・佐藤帝一と義兄妹になってしまった佐藤夕夏。だが、実は両親が未入籍のため義兄妹ですらない二人。新婚旅行に出かけてしまい両親不在となった家で二人きりの生活に。シスコンの兄・帝一に夕夏は冷たい態度…


■ 総評 ■  ★★★☆☆

 先生×生徒と義理キョウダイの恋という禁断の二重奏で、ドキドキ感も2倍かと思うところだけど、あくまでも重点を置いているのは家族の関係。一応生徒・先生の物語ではあるんだけど、作者もテーマは家族と公言していることもあって、生徒と先生としてのドキドキ感はないので、先生・生徒モノを期待して読まれると期待はずれになっちゃうかもしれません。

 義兄妹の禁断の感じはあるけど、それより上の家族としての在り方とか家族が存在する意味とか、物語全体としてはコメディぽさがあるものの、結構重たいテーマ。
 この漫画はギャグで生まれたものばかり。シュガー☆ファミリーというタイトル、シュガー=砂糖だから家族の甘い様子かなと思ったら、シュガー=サトウ=砂糖ではなく佐藤さん家という衝撃的事実。さらに、キャラクターもギャグ。シュガー=砂糖ではないのに、キャラクターの設定は砂糖を生かし、調味料シリーズで砂糖が甘いなら瑛冶は七味ということで七壬、祥子は胡椒(こしょう)を逆さに読んで誕生した、さらには登場人物たちの変態ぶりなど、笑いでしかない漫画なのに、テーマはけっこう真面目で実は読んでみると深い内容だったのかも、なんて思います。

 帝一のキャラクターは最初から強烈で途中女装とかもありドン引きするような感じでしたが、後半夕夏との関係に変化がみられるようになってから若干変態ぶりは抑えられたかなという印象。それでも、シスコンぶりは最後まで絶好調で楽しませてくれました。夕夏や帝一をはじめメインとなる他のキャラクターも最後まできちんと描かれていて、キャラの動きはわりとしっかりしてました。

 夕夏をめぐった新と帝一との展開は、ずっと平行線。新が夕夏を振り向かせようと粘る…が繰り返される。だから大きな進展はなく、恋の方の動きは地味でわかりずらかったというのが正直な感想。だけど、逆をいえばそれほど同じことを繰り返すことによってリアリティさが増し、不自然さは残らないとも思います。だた、それでももう少し具体的な動きがあればよかったと思うところです。



■ 登場人物 ■
 
佐藤夕夏
 高校生。母親が事故死した後は父子家庭に。
 
佐藤帝一
 夕夏の父の再婚相手の息子。シスコン。
 
七壬瑛冶
 帝一の友人。高校時代の担任と付き合っている。
 
高梁祥子
 夕夏の友人。先生との事情を知っている。
 
二ノ宮玲子
 夕夏の高校の教師。未亡人。


※ここより下はネタバレとなっています。了承したうえでお読みください。


 1巻  2006年9月5日 発売

 [ 第1話 ]

 義理兄妹+先生・生徒という禁断モノが合体した物語。両親の再婚により突然兄妹になってしまった佐藤帝一と佐藤夕夏。でも、二人は同じ学校の先生と生徒。先生と生徒にキョウダイの関係をミックスしたのは新しいですね。
 相手役の先生(兄)がシスコンで乙女のような男という強烈キャラ。父親もそういうタイプだから、生徒(妹)の夕夏は帝一のような男は御免という、ラブラブではなく、ヒロインはツンツンしてる。最終的にはこれがきっとデレっとなって、ヒロインはツンデレキャラになりそうな予感。
 おまけに兄妹でありながら、両親が未入籍のため戸籍上は他人。しかも、両親が新婚旅行に行ってしまって家では夕夏と帝一二人きりの生活。少女漫画によくある設定が揃って、物語を作るには十分な材料です。

 最初といったらキャラや物語の説明の意味もあるだろうけど、すでに同居してるところからスタートしており、いきさつは回想で簡単に説明されてる。さらに、そこから話はどんどん進んでいて、夕夏の裸に帝一が動揺したり、それぞれに孤独があったり本当はお互いキョウダイがほしいとか、実は気持ちはつながっているような感じで、少女漫画で禁断モノですからこれがきっとキョウダイ以上の何かに変化していくんだろうな。



 [ 第2話 ]

 帝一の誕生日話。妹に誕生日を祝ってもらいたくてウキウキの兄に、妹の夕夏はどん引き。冷たい態度だけど、本当は喜んであげることをしたかった夕夏。誕生日は今回の兄のこと含めろくなことがないという夕夏だけど、最後に帝一を祝ってあげるまでの変化がもう少しわかりやすいと良かったです。

 誕生日に手をつないだり、観覧車乗ったり、ごはん食べたり…というのは妹とするものではなく恋人とするものですよね。夕夏とそういうことがしたいと夢見る帝一ですが、それは妹が夕夏だったからなのか、それともかわいい妹なら誰でもいいのか。帝一はたしかに妹として夕夏を可愛がっているんだろうけど、あまりにもシスコンすぎるかと思えば女性として夕夏を意識したり、突然フツーになって、でも基本変人で、彼の夕夏に対する気持ちが私は読んでいて時々わからなくなります。



 [ 第3話 ]

 帝一の友人・七壬登場。一応ライバル扱いということらしいので、夕夏をめぐっての帝一のライバルになるのかな。夕夏を迎えに来て車に乗せてという流れはそれらしき行動だけど、夕夏に男は苦手なんじゃないかとか言ったところに危険な雰囲気があり、本当に帝一のライバルか疑問に。そしたら、瑛冶には夕夏と同じくらいの娘がいる女性と結婚を考えているそうで、あっけなくライバルから脱落に… もう少し楽しませてくれてもいいのになぁ。

 一方、帝一の方は、本当に夕夏を妹として思ってるのか疑問になってきました。夕夏以上の妹なんて…という発言とか、瑛冶といる夕夏に動揺したり、夕夏の「兄は妹のことでオロオロしたり振り回されたりしない。」という言葉など、やはり男性的な立場で夕夏を見ているんじゃないかという伏線のような感情がみえてきましたね。「誰にも渡したくない。」なんていうセリフ、妹にはフツー言わないよな。もしそれが妹としてだったらそれこそシスコンです。
 それに瑛冶との会話で彼女を盗ったとか盗らないとかいう話があったので、精神が病んでない健全な男性だったわけですから、どんな妹でも変人態度になるとは限らないんじゃないかな。



 [ 第4話 ]

 帝一に子供!?突然女性が現れて「アナタの子よ!」と子供を連れてくるという昼ドラに出てきそうな展開に。まぁ、はじめから帝一の子どもだとは思いませんでしたが、自分の子どもだとも聞かずに預かる帝一ってお人よしなのかなんなのか… 帝一の高校の先輩らしいけど、一応帝一にそういう人が訪ねてくるということは、やはりタラシ系なんだな。 子供を夕夏だと思って可愛がるところはやはり変態です。(笑)

 帝一の子どもなのか考える夕夏。彼女はまだ帝一を男性意識としては見てるかわからないけど、少なくとも妹としての心配する気持ちくらいは持つようになったのかな思いますね。



 2巻  2007年6月5日 発売

 [ 第5話 ]

 夕夏にキスマークがついて!?また現実逃避の兄・帝一。真実を聞くのが怖くて耳ふさいだり、だけど気になってこっそりたしかめようとしたり… なんか兄のするようなことじゃないですよね。実際のお兄ちゃんなんて妹のことで過剰反応なんてしませんから。
 キスマークをつけられたということは、そういう相手、つまり彼氏がいるという認識になるわけで、そうなったら自分の存在なんて必要なくなることに寂しくなる帝一ですが、それを知った夕夏は同じように突然大切なものが壊れる怖さを知っているから、相手がどんな人であれ身近な人がいなくなるという気持ちは帝一と同じで、冷めた態度でも通じるところはあるわけですね。それが相手に対してどういう感情なのかは、夕夏にはまだ見えませんがね。
 でも、結局このキスマーク騒動は友人のウソであるというオチで、私もすっかりだまされたけど、肝心のキスマークがついていないことに夕夏と読者を気付かせるところが、私にはあまり衝撃さがなくて「なんだ…」という小さい感情くらいでした。

 それから、夕夏と帝一が同じ学校の先生と生徒ということはわかっていても、初めて会った時に知り合いというわけでもなくてどうしてフツーの反応なんだろうかと釈然としないままでしたが、夕夏が高校進学と同時に、つまりお互いまだ学校に来る前に会っていたという事実がわかってすっきりしました。私の読解力が低いだけなのかもしれませんが…
 それにしても、夕夏に構ってもらえなくて、引きずり落とされたり、蹴り倒されたりしなくなって嘆いたり、自分は足蹴りにすら値しないなんていう発言には、もしかして帝一はシスコンではなくただのマゾなのか?と思ったり。これじゃ本当に変態でしかないよ…



 [ 第6話 ]

 今度は夕夏の誕生日編。夕夏の誕生日といったら毎回父親がどっきりプレゼントを用意して困り果て、いいことがないと思ってる。今年からは先生というオマケがついてきて、シスコンぶりにやはりいいことがないと思う夕夏だけど、新しい家族ができて、カレンダーに新しい色が加わるといういいこともあり、先生に対してツンツンしている夕夏と、本当は家族としては先生の存在に安心している夕夏と二つの感情が交えられていて、テーマとしては先生と生徒・家族の二つが存在するのかなって思います。
 もちろんシスコンの帝一も夕夏に誕生日プレゼントを用意しているわけだけど、夕夏はプレゼントをもらうことよりも「おめでとう。」の言葉が欲しいと思ってる。夕夏のそういう何気ない気持ちが私にはすごく共感できます。言葉って大事ですよね。

 瑛冶ってあんなに派手な格好する人なんだなぁ。ミステリアスな雰囲気と人格があってもそこまで変わった人という印象はなかったのに、派手な格好を似合うと酔いしれているところをみるとナルシストタイプにも思え、脇役によくみられる変人タイプで、先生は強烈なインパクトを残すキャラだけれども、友人もやはり曲者というか少し変わった人物で漫画らしいですね。派手な格好で学校に現れて帝一に「恥ずかしくないのか?」と突っ込まれ、「お前にだけは言われたくない。」と返す先生と瑛冶のやりとりが実は今回の話の中でいちばん笑えたところでした。



 [ 第7話 ]

 7話はなんといっても帝一の女装(!)がみどころでしょう。異性ではなく同性のキョウダイがいたらきっと夕夏は楽しいのではないのかと考え、なんと女の子に変身! それを聞いた帝一の反応を見た時まさか…とは思ったけど、予感的中でもびっくりだわ\(◎o◎)/!これって本物の変態…?ドン引きする夕夏の気持ちに、ここは同情せずにはいられなくなりました。別に女装に対して偏見を持っているわけではありませんが、あまりの強烈さに、漫画が故の展開にびっくりしているだけです。
 二ノ宮先生に「自分はどこか変なんでしょうか?」と真剣に聞く帝一ですが、自分の変人ぶりに気付いていない時点でヘン。帝一の本気のアホさを見たような気がします。

 帝一のシスコンぶりはこの女装を見て加速しているのはいうまでもないですが、夕夏を夢にまで見るほどの変態ぶりになってきて、帝一の暴走がどこまで続くのか…それが一番の楽しみとするのがいいのかもしれません。(笑) 「妹を襲ったら変態を通り越してケダモノだ…」という瑛冶の言葉に、彼の役割って物語中の夕夏に対する帝一の行動や感情などをさりげなく説明してくれる重要人物なのかなって思います。また、二人のやりとりが物語をさらに面白くさせるひとつになっているのかもしれません。



 [ 第8話 ]

 瑛冶の彼女(未亡人)の娘・写真家志望の椿。瑛冶に頼まれて家出している彼女を説得することになった夕夏だけど、瑛冶のことが好きで告白したけどショックでいなくなったのかと見せかけて実は母親が再婚を考えていることにショックだったという事実。さらに、実は夕夏も本当は父の再婚にはショックという、二人には共通する部分があること、そして、モデルだった母だけど顔がわからないという夕夏の写真嫌いなところにも結び付くところがあって、深く物語を考えてあるところには感心。
 漫画の世界の中で、愛する人を失った人が新しい恋をすることに実は私も読んでいて寂しいと思う人間なので、今回の椿や夕夏のように、その人だけのものでいてほしかったという気持ちにはものすごく共感できました。前の恋に縛られないで人間前向きに生きていくことも必要なので、どっちの決断になってもしかたありません。こういうのに答えはないです。作品によっては、昔の恋人にすがりついているのがいやという人物や、逆に今回のようにその人だけを想い続けてほしいという人物、どっちもある設定で、それは作者自身の考えなので難しい問題だと思います。
 漫画の世界は偶然が重なるもので、まさか瑛冶の彼女が夕夏の学校の二ノ宮先生だとは気付きませんでした。世の中って狭いもんだなぁー。


 3巻  2008年2月5日 発売

 [ 第9話 ]

 またまた新キャラ出ました。夕夏の中学の時の後輩・新くん。昔は可愛くて弟みたいな存在が、しばらく経って再会すると男前になっていた… 彼は夕夏のことが好きというのはみえみえで、彼女をなんとか振り向かせようとするんだろうな。でも、夕夏は新を弟としてしかみれなくて、急に人が変わったようになってドキドキというか戸惑ったりする。少女漫画によくみられる話だー。
 新の登場で穏やかではないのが、もちろんシスコンの兄・帝一。夕夏に近づこうとするのをけん制したり、中学の時に夕夏と新がキスした(ウソ)とかの話でまだアホぶりを発揮。新の教師としても義兄としても問題あるという発言には妙に納得してしまった…(笑)

 新が中学の卒業式に女装姿。前回帝一も女装を披露。作者はキャラクターに女装させるのが好きなのか、シュガー☆ファミリーという作品だから何でもありでやってるのか…



 [ 第10話 ]

 マイ・シスター・コンテスト、略してシスコン!登場人物の変態キャラに、ダジャレから生まれたキャラクターたちにタイトル… この漫画、何でもありだな…

 ミスコンなら現実にはあるけど、現実にありそうでなさそうなシスコンとはユニークな発想。これもこの漫画だからできた企画かもしれません。校内において最も妹に相応しい子を選ぼうってことで、クラス代表に勝手に決められて出場することになった夕夏。もちろん本人は乗り気ではなく、夕夏の意思は無視されたままコンテストが進むんですが、これまたコンテストはコスプレ祭りのようで、ここまでくると作者の趣味じゃないだろうかと思えてきます。絶対楽しんで描いてるでしょ。
 夕夏は先生との秘密に脅されて出場するというのもあったけど、それは先生がゲイだという勘違いのオチで、やはりこの物語にギャグは欠かせないものになっています。



 [ 第11話 ]

 新クン再び登場。帝一と夕夏をめぐって本気対決するのかと思ったら、やはり途中で帝一が笑い担当になり、対決はどこかへいき、結局新くんはまだ夕夏の弟という結末に。なんだけど、新が夕夏をあきらめた理由が弱いかなと。
 波にのまれた夕夏を助けようとしたら、助けに行った帝一が上がってこない…という、彼の行動がすべてギャグになってしまうのがこの漫画の面白さなのかも。帝一が本来の少女漫画のカッコいいヒーロー像から程遠いのが哀れです…(笑)

 同時に帝一の女性関係もまたみえてくるわけだけど、帝一は昔から女性は切らしたことがないというところは少女漫画の男性によくみられるタラシ系。フラれたその日にすぐ次の女… たぶん帝一からシスコンを取ったらただのタラシにしかならず、どこの少女漫画にでも出てくる男性なんですよね。だから、帝一が病んでいるのは一時的な何かだと思いたいところです。病んでいる理由が夕夏だから特別なのか、そのへんは正直考えるのが難しいですが、少女漫画の展開ならシスコンの裏に別の感情があるはず…?


 4巻  2008年6月5日 発売

 [ 第12話 ]

 なんと交通事故で帝一が記憶喪失に!出た〜。私が嫌いな記憶喪失ネタ。(笑) こちらも先生・生徒モノで時々使われる手法。もし、夕夏と帝一が本当の兄妹だったら、違う出会い方をしていたら…という考えで生まれたそうですが、普段帝一は病んでいるので、記憶喪失になるとまともな人間に。
 作者も夕夏も言っていましたが、記憶喪失になっても人間の本質は変わらなくて、シスコンでなくなった帝一はただのタラシでしかなく、あとはフツーのお兄ちゃん。フツーになって己の変態ぶりにやっと気付いてくれたかと思うとうれしいわ。客観的にみて帝一のシスコン、いや、変態ぶりはすごすぎますからね。
 帝一がまともな人間になるとかえって調子狂っちゃいますが、最後に階段から転がって記憶喪失がなおり、普段の帝一が戻って安心?

 先生が記憶喪失なのでフツーのお兄ちゃんになると、夕夏に構うことが少なくなり、実際にそうなったら寂しさを感じたり、帝一の方も、妹以外の感情があるのかと自問自答して悩むわけで、それ以上の感情があるんだろうというのがみえみえです。



 [ 第13話 ]

 再び登場、二ノ宮先生の娘・椿。夕夏が椿のカメラ壊しちゃって、その代償として被写体を受けることになったんだけど、やはり夕夏は笑わない。ここでもまた夕夏のカメラ嫌いが語られるわけだけど、椿が言っていたように、昔の写真に思い出がなくても今は一緒に思い出を作れる人がいる。だから、夕夏のそういう孤独な心が少しずつ解けていけばいいなと思います。

 帝一が酔っ払って夕夏にまた痴漢行為を… 先生って普段病んでいて変態ぶりを発揮しているので、酔っ払ってもヘンタイみたいで、客観的にみたら本当にあぶないお兄ちゃんなんだろうなぁ。



 [ 第14話 ]

 クリスマス編。夕夏は先生や新くんへのプレゼント資金のためにバイトを始めるんだけど、先生は夕夏が男と過ごすのではないかと、また妄想を膨らませますが、夕夏が先生のためにバイトしてるんだろうなというのはすぐにわかることでした。
 ただ、先生へのプレゼントが自分とうつった写真を写真立てと一緒にというのは思ってませんでした。でも、夕夏が先生に写真をあげたのは、先生を兄としてだんだん認めているということなのかもしれません。

 帝一は相変わらずのシスコンで、兄妹になって初めてのクリスマスなのに…と兄妹で一緒にクリスマスを過ごそうと考える時点でコワイ… いちばん欲しかった妹は手に入ったはずなのに…という心情にはきっと物足りなさがあるんじゃないかなと。もう二人の気持ちはバレバレなんだから、いい加減じらさないで新たな進展でもあったらいいのになぁー。



 [ 第15話 ]

 夕夏と帝一との間は相変わらずだけど、夕夏の母親のことがやっと明らかになりました。モデルだという母親ですが、もともとはカメラマン志望で、狭山天龍というカメラマンに弟子入りを申し込み、たまたま撮ってもらった写真が評判でそのままモデルに。
 夕夏が狭山から話を聞く中で回想で登場した夕夏の母・夕子は、狭山に「弟子にしてください。」とか「出来ちゃいました。」とか明るく元気な印象を持ち、読んでいく中でどうして夏生(夕夏の父)と結婚したんだろうと考えた時に、実はサバサバした感じの人ではないかなと思いましたが、やはり夏生の証言により夕子はおとこらしい人だったということが判明。出来ちゃったというのはもちろん子ども=夕夏のこと。夕夏はできちゃった結婚で生まれた子だったんだなぁ。それは予想つかず。
 夕夏に夕子のことを教えてくれた狭山さんって、実は夕子のことが密かに好きだったんじゃないかなと思います。でも、夕子は夏生が好きで、狭山先生は想いを伝えることもできないまま、そして夕子に会えないまま…なのかな。夕夏が生まれる前にそんなドラマがあったんですね。番外編で夕夏の両親・狭山先生のエピソードなんかいいかも。

 椿に、夕夏と二人でいてへんになんないかとツッコまれた帝一に笑うしかないです。(笑) 極度のシスコンです。もちろん椿が言っているのは、男性として理性が保てるかどうかってことだろうけど、読者は帝一の変態ぶりをこれでもかっていうくらいみせられているので、いまさらヘンかどうか聞かれても唖然としちゃいます。
 今回は帝一の手番は少なめ。前回の話の流れで冒頭は夕夏にあげたクリスマスプレゼントの話で、携帯電話というフツーさにちょっとガッカリ?先生のことだから、やはり兄に関係したモノとか強烈でとんでもないものを贈ったと思ってたのに…


 5巻  2009年2月5日 発売

 [ 第16話 ]

 帝一の同窓会になぜかついていくことになった夕夏。ここでも帝一の過去が暴かれることになるんだけど、お酒の許容量を超えるとキス魔になるという、やはりどこをとっても変態人間です。(笑) でも、その一方で、同窓会の女性メンバーのほとんどが帝一(&瑛冶)と付き合ったことがあるというタラシぶり。帝一はタラシかシスコンのどっちかだな。
 同窓会で様子がおかしかった帝一だけど、その理由が自分の母親と夕夏の父親が実はまだ未入籍で夕夏とは義兄妹になっていない、つまり他人、先生にとってみれば生きる希望を失うことでもありショックなこと。先生の両親は母親が子供を産めないことで離婚したため、父親のことを話がらなかったり、自分も人を傷つけてしまうのではないかという気持ちもあり、帝一の目線で進行された16話の中で、彼の心の中の孤独や家族に対する不安などが見えた気がします。
 でも、夕夏は親が未入籍だったことは知っていても、それでも帝一のことを兄として慕ってくれている。夕夏の想いが帝一の心もまた少しずつ溶かしていく存在になればと。前は「お兄ちゃんと呼んで」という要望に応えなかった夕夏だけど、今でも兄のシスコンぶりに嫌々ながらも「お兄ちゃん」って呼んであげることもあり、少しずつ夕夏の心も変化してるかな。



 [ 第17話 ]

 帝一VS新、再び。先生懲りないというか、夕夏も言っていたけど教師のくせに学習能力がまるでない… しかも、新クンより子供っぽい性格してる。大丈夫か帝一…
 相変わらず新クンの行動に戸惑う夕夏だけど、新くんは何一つ変わっていなくて、夕夏が自分の気持ちに向き合っていないのか、気付いていないのかで、気持ちは夕夏次第。新くんを目の前にすればドキドキすることは彼に対して少しでも男性意識は持ってる。だけど、彼に迫られた時に夕夏は先生の方の名前を呼びます。寂しかったりコワイ思いをすると本当に好きな人の名前が出てくるのが少女漫画のヒロインですが、やはり新に対して答えを出せていないのは先生の存在が大きいのでしょうかね。

 女性の浴衣姿っていいですよねー。夕夏の浴衣姿もかわいかったー。私個人的には男性はスーツ姿がとても好きなのですが、女性は浴衣がいいですね。



 [ 第18話 ]

 夕夏と帝一ふたりだけの家族旅行!でも、血は繋がってないし兄妹には見えなくてただの先生×生徒のお忍び旅行だよね…作中でも認定されちゃったし。(笑) でも、帝一の頭の中は本当に家族旅行なのか、夕夏と二人きりなのに全然雰囲気なくて無邪気にはしゃいでるし。フツー、あの状況だったら少しはドキドキしてもいいと思うんだけど、そんなそぶりとかヒントになるようなコマなんて何もなかったな。先生は本当にただのシスコンでしかないのか…なんて改めて考え直してしまいそうなほどです。おまけに怖がりなのか、夕夏に脅されたらひとりでトイレに行けなくなるという、精神年齢はいくつなのだろうかと歳を疑いたくなるくらいです…
 寝ている時に夕夏を襲うのかと思ったら、トイレについてきてくれるようにお願いするための行動で、フツーだったら甘美な展開になりそうなところも帝一の存在は全部笑いにしてしまいます。

 一方、夕夏の方は先生と二人で落ち着かない様子。年頃の女の子ですから相手が大人ならそれなりにドキドキするでしょうけど、今の状況を考えると先生といてドキドキしてるのは男性的意識もあると思います。

 進展しそうでなかなか進まない二人の関係。それをいつも帝一が邪魔するんだよなー。



 [ 第19話 ]

 本編の話数でカウントしてますが、ほぼ番外編。瑛冶と二ノ宮先生のストーリーです。二ノ宮先生の亡き旦那さんとは、瑛冶が自分の親の見舞いで病院に来ていたときに知り合って、そこからプライベートでも関わるようになった…というのが二人の運命を変えるきっかけになるわけですが、そこからどうやって恋人になったのかは描かれておらず、期待していた読書にはちょっと肩透かしを食らった気分かも。
 でも、その前に二人がどうやって親しくなったかというのも大事だし、夕夏や帝一ストーリーに比べて真面目で切なくて、素敵なお話だったと思います。

 二ノ宮先生のダンナさんも変わったタイプで変態扱いに。 この漫画に登場する男性キャラクターはこんなのばっかりかい!


 6巻  2009年11月5日 発売

 [ 第20話 ]

 最終巻ということで、やはり物語は少しずつ動き出しました。先生と二人でいるのが気まずいというのは、兄妹ならあまり起きないことだと思います。新くんと先生に挟まれて戸惑う夕夏。もう答えは最初からみえてるようなもんですが、これぞ少女漫画の醍醐味。やっとそれらしくなってきました。

 離婚した先生のお父さん。汐見さんという人から電話が佐藤家に。コミックス最初の方で先生がお父さんのことを許せていない様子がありましたが、再び登場で、お父さんのこともまだ明らかになるところがあるんだろうと思います。が、まだ残ってる問題は山積みなのに、新たな展開をみせるかのように現われた謎の人物。妹と言っていましたが・・・

 そういえばこれはダジャレから生まれた漫画だということを忘れていましたが、学園祭でヒツジ喫茶と聞いてまさか「羊の格好をしたメイドさんの喫茶店」とは読みが甘かった… だぶん執事喫茶とかけてるんだろうけど、執事は“シツジ”、羊は“ヒツジで”、冷静になってみればヒツジ喫茶に執事はあり得ない… でも、執事って『しつじ』というよりは『ひつじ』っぽく発音するのが日本人だと。私を『わたし』ではなく『あたし』と言う人と同じ考え方です。すっかり騙されたぁー。おまけに帝一の妄想という設定で夕夏をメイドさんのコスプレにさせてしまうなど、本当に物語の登場人物たちが作者に遊ばれている…



 [ 第21話 ]

 先生の本当の妹が登場!夕夏と同い年の汐見千秋。最初は父親の再婚相手の連れ子かと思いましたが、どうやら異母兄妹らしいので雅美さんと離婚した後すぐに再婚して子供が生まれたんだろう。いくら異母とはいえ父親は同じだから半分血は繋がってる。先生にとって本当の妹が出来たということは血のつながりのない夕夏は本当に赤の他人になってしまう。そんなことに不安になって、千秋に「今は私のお兄ちゃんなの」といった夕夏。言葉には表わさないけど、夕夏の中で先生も兄以上の存在になってると思います。
 千秋といる先生は、家出した彼女を甘やかすのではなく大人な対応で接している本当にお兄ちゃんのよう。本来のお兄ちゃんというのはああいうカンジだって。作中で説明があったけど、夕夏だったら必要以上に気にして別の展開になっていたと思う… 本当の妹ができたことでいちばん欲しかったものが手に入った帝一だけど、本当の妹よりも義妹の夕夏を選んだ帝一。「妹は必要ない。夕夏がいるから。」 このシーン、すごくポイント。夕夏がいるからいまさら妹はいらない。妹は欲しいけど夕夏がいちばん。つまり、すでにある男性的意識として夕夏を選んだか、妹として夕夏の方を取った前者と、夕夏が妹以外の存在であると目醒める後者。広く考えれば二つの意味合いがあるように思います。はたしてどっちかな?



 [ 第22話 ]

 ラスト2回になり、夕夏の恋に決着をつける寸前まできました。夕夏タン先生と新くんとの間で本気で迷ってます。でも、夕夏は寝言で先生の名前を言ってしまったせいなのか、新くんが夕夏に答えを出すように迫る。徐々に終わりに近づく感じはあるんだけど、展開としてはほとんど変わっていなくて、新が夕夏に求愛するのが繰り返されるのであまり書くことないんだなぁ。



 [ 最終話 ]

 長かった夕夏と帝一の禁断の恋も?見納めです。先生か新くんかどちらを選ぶのかは夕夏だけが知っている、といっても夕夏に対する先生の想いとか行動とかで新くんが身を引いて二人が結ばれた感じはしますがね。

 最初、シュガー☆ファミリーという意味がわからなくて、わかっても二人の苗字が佐藤だからなのかという軽い認識でしたが、最後に帝一が夕夏に「いつかオレの家族になってくれる?」と聞いたり、10年後家族と言われて浮かぶのは親や兄弟の顔じゃないという言葉などから、これって結局帝一が夕夏に抱いていたのは妹像ではなく、本当の家族、つまり結婚とかそういうことが意味されるのかなって。で、作者さんが最初は洒落でつけたつもりだったのに結果的にはよかったということですが、夕夏と先生が結ばれるのがゴールの漫画なので、この先の二人を想像したら本当にタイトルに深い意味を持っているんだろうなと思います。