青天大睛
 シリーズ…フラワーコミックス
 著者…相原実貴
 出版社…小学館
 新書判巻数…全6巻
 発売年…1999年〜
 文庫判巻数…全3巻
 発売年…2006年〜
 掲載誌…別冊少女コミック
 参考リンク…小学館コミック




■ ストーリー ■
 なんとなくな毎日を過ごし生ぬるい生活を送っていた女子高生の堂本亜子。そんな亜子が、学校の先生・片寄クンに恋をしてしまった!片寄先生の視界に入りたい亜子は、それまでの生活から身も心も入れ替え、先生が顧問を務める男子バスケットボール部のマネージャーになる…


■ 総評 ■  ★★★★☆

 なかなか面白かったです。小学館の漫画なのでそこまで期待してませんでしたが、つかみが良かったし、最初から物語に引き込まれる感じで、面白さが最後まで手が抜かれていないのは素晴らしかったです。
 登場人物がけっこう多いのですが、脇役キャラもほとんど埋もれず物語に絡んできて、キャラクターが上手に動いていました。キャラクターの動かし方がうまいとまた面白さもアップしますね。
 主人公のライバルとなる女性、この作品でいえば片寄先生の奥さん・燿子になるわけですが、多くの場合途中の展開に投入されるキャラのひとりにすぎませんが、燿子の場合は初登場から最後まで続投で、先生と亜子との関係を左右さる超重要人物で予想以上の活躍でした。

 さて、今回の先生・片寄クンは既婚者ということで、さすがにこれはめずらしいケースでした。先生が結婚となれば今までの先生生徒モノとは少し違った角度から楽しむことができますが、やはり先生と既婚者という両方の立場から苦悩する片寄先生の態度とか、他の作品では見られない先生で、それだけでも面白かったです。
 あと、個人的に片寄先生でよかったところは大人な雰囲気。亜子と10歳差の26歳ということで、やはり20代後半の男性ってかっこいいというかハンサム。20代前半だとまだ子供っぽいような雰囲気もあったりするけど、片寄先生はおとなの匂いを感じました。実は、私が片寄先生に魅力を感じてしまったのは、性格とかいうことじゃなくて、その雰囲気なのです。おとなの男の人いいなぁ。

 主人公・亜子は今時の女の子でしたが、部活入って真面目で、先生を好きになろうとがんばって、でも決して嫌味がないところが好感持てました。言葉遣いが面白かったです。
 亜子の友達がガングロで、そういえばルーズソックスにガングロメイクという社会があったのを思い出しました。その当時のファッションや流行がよく反映された時代背景で、そういった意味でも身近に感じることができました。

 こうやって感想書いてみても物足りなさが残ることはなく、本編で投げかけられた疑問を無理せずちゃんと解決することもできているし、完成度は高いでしょう。小学館の中で先生生徒モノを読むならまずこちらの作品をオススメします。


■ 登場人物 ■
 
堂本亜子
 ……高校2年生。バスケ部マネージャー。
 
片寄明仁
 ……世界史教師。バスケ部顧問。
 
佐藤泰地
 ……高1。バスケ部。
 
堂本克巳
 ……亜子の弟。バスケ部。
 
仁科みさき
 ……亜子のクラスメイト。バスケ部マネージャー。
 
沖野秋也
 ……亜子の同級生。バスケ部。
 
佐沙木燿子
 ……明仁の妻。教師。


※ここより下はネタバレとなっています。了承したうえでお読みください。


 1巻  1999年3月26日 発売

 [ 第1話 出会ってしまった ]

 今時の女子高生ギャル・亜子。とりあえず学校に行って毎日がテキトーに終わって、部活もせず遊び回るという、「えぇ〜!見た目ギャルな子主人公!?」と思ったら、自分を補導して見逃してくれた片寄先生に恋をしてしまい、先生に近づくため、遊びも止めてダラダラした生活に別れを告げ、茶色い髪も黒く染めて髪も切って、片寄先生が顧問の男バスのマネージャーに志願という大変身ぶり。や〜、ギャルが先生との恋愛じゃなくてよかった…(笑)
 「自分の中のどこにこんなパワーがあったんだろう。」という亜子の言葉が、恋する女の子の気持ちをよく表していて、人って何かに夢中になると今まで気付かなかったほどのパワーがあったりして、何か糧になるものって大切です。

 それまでギャルで遊んでいたばかりの亜子だったから、クラスメイトであり先輩マネージャーのみさきにはなめられていたけれど、それが逆に亜子をやる気にさせる。亜子は片寄先生に自分のことを覚えてほしくて一生懸命。だけど、まだ先生の中で亜子は無関心な存在。それにショックを受ければあきらめそうだけれど、それでも頑張って続けているのがわかってもらえて、はじめて先生から名前を呼んでもらえた亜子の気持ちもまた、同じように先生のこと好きな人にならとても共感できる部分だと思います。恋って人を強くしますね。つかみとしてはなかなか良いんじゃないでしょうか。



 [ 第2話 片寄クンとタイジくん ]

 ピックアップされるのが二人の人物。まずは、亜子の恋の相手・片寄先生。かっこいいけど、教師という仕事をテキトーにやって、生徒のことなんかどうでもいいサイテー教師という噂を話すことで、片寄先生の人物像を読者にインプットさせる。
 そこで、もうひとり絡んでくるのが、バスケ部所属の1年・タイジ(佐藤泰地)くん。かわいくて弱そうな感じ。そんな彼の前に不良グループみたいな人が現れて、部室に連れていく。タイジが心配な亜子は片寄先生を呼びに行くけれど、先生はほっておけと冷たい。そこで片寄先生のテキトーぶりをさらに印象付けるかたちになってますね。
 先生のこと見損なった亜子が捨て台詞を吐き自分ひとりでタイジを助けに乗り込んで、やっぱり殴られるかと思ったら、まさかのまさかで片寄先生が現れ、やっぱり根がどんなにテキトーでも、いざとなるとカッコよくなるのが少女漫画のヒーローです。
 で、気になるタイジくんですが、悪い人たちにいじめられているのではというのは違うみたいで、キレて不良グループなぐったり、仕返しにきたとかで、「西中の佐藤」というあだ名、過去に何かありますね。しかも、ここで片寄先生と一緒に彼がクローズアップされるということは、男性キャラの中で先生に次ぐ重要キャラか。亜子と絡んでますから、今後の物語に影響あり!?



 [ 第3話 やめられません勝つまでは(その1) ]

 部室で揉めてたことが学校にバレて、片寄先生が顧問として責任を問われることに。女子バスケ部の顧問に男子バスケ部をバカにされて、亜子は周りの反対も聞かずに見返してやろうとしたら、女子バスケ部員にからまれて、取っ組み合いのケンカ… それまでの亜子のことはよくわからないけど、なんとなく生きていた彼女からは思えないほどバスケ部に熱中して、実はすごく物事に対して真面目に取り組む子なのかなって。本来だったら、自分だけ突っ走って尽くそうとする女の子は苦手なキャラなんだけど、亜子はなんだか好きです。豹変して人を殴ってしまったタイジに「タイジくんはあたしの知ってる優しいタイジくんだから。」という優しさも、亜子の人を信じる気持ちとかがあってかわいいです。

 練習量を増やそうと思ってもやる気のないだ部員で唯一亜子を応援してくるタイジの優しさ。でも、実は裏の顔があったりして、あの怖そうなタイジくんからは想像できないですね。

 この話のなかでいちばんムカついたのは、女子バスケ部の顧問・志賀先生、通称・シガボン。男子バスケ部や片寄先生に嫌味を言って、しかも顔がまた腹立つような形相してるので、ムカつき度が倍です。(笑) 片寄先生に嫌味を言ったのだって、きっとかっこいい片寄くんをひがんでるんだよ。でも、ああいう悪役キャラがいるから面白いんですよね。でも、やっぱムカつく。

 亜子が男子バスケ部に入ったのは男狙い放題というのは間違いではないけど、微妙に違うのがなぜか笑えた。亜子は男子生徒を狙っているのではなく、片寄先生ですから。先生だったら別にいいじゃないですか。ちゃんとマネージャーの方も頑張ってるみたいだし。意外と先生目当ての人、あなたの周りにもいるかもよ?



 [ 第4話 やめられません勝つまでは(その2) ]

 女子バスケ部と亜子やみさきが乱闘騒ぎを起こして、活動停止処分になって、責任を感じた二人は校長に直談判!スゲー行動力。その熱意があって校長は許してくれたとのことで、自分で起した問題をちゃんと片付けた亜子ちゃん。突っ走ってしまうところがあっても、それは一生懸命で憎めないですね。
 それでも迷惑掛けて責任を感じてしまっている亜子。退部しようと考えていところへ励ましてくれた片寄クン。みさきも亜子のがんばりに少しは見直しているようだし、亜子のマネージャーぶりも少しずつ認めてもらえるようになってるのかな。

 タイジは亜子がバスケ部のために一生懸命なのを知って元気づけたり、雑用する亜子を手伝ったりで、次第に亜子ラブになってきました。ということは、片寄先生と三角関係?やはり、タイジがライバルポジションってことでしょうか。だけど、姉の良さがまったくわからない弟・克巳のぼやきが面白いですね。


 2巻  1999年8月24日 発売

 [ 第5話 本気なんです ]

 亜子が先生に告白したけど、タイミングよくタイジくんが入ってきて、邪魔されちゃいました。タイジは亜子のことが好きだからというのもあるんだろうけど、まさか告白相手が片寄先生というのにもオドロキだろうね。しかも、入って来た乗りが「自分もスキー。」みたいな感じで、先生には「寒いだろー。」とかわされてしまいました。イエスともノーとも先生は言ってないけど、今は相手にされてない感じですね。

 子供扱いされて悔しがってもあきらめず。風邪で学校休んだ日、克巳の家庭訪問に片寄先生がやってきたけど、人がいなくなったとかで探しに行くのを手伝った亜子は、自分の体のことよりも先生の一大事の方を考えるなんて、本当に先生のこと好きなんだなと思います。亜子のおかげで先生が探してる子は無事に見つかったんだけど、「ウチの息子なんだ。」と紹介。……ちょっと待って。…えぇ〜〜!息子ぉ〜!?息子ってことはつまり…



 [ 第6話 悪人登場 ]

 片寄先生、結婚してたの〜??でもね、その後の会話の中で、潤くん(子供)が自分のこと息子だって言っていいのかと聞かれて「むすこみたいなもんだろう。」という、片寄先生の本当の子供かどうかという疑問を残すことに。
 息子ということは片寄先生はパパで、パパということはつまりママもいるわけで、ママは先生の奥さん。さすがに既婚者相手じゃ亜子の恋は難しいだろ〜。でも、漫画ですから。きっとわけありでしょう。(笑) すでに潤くんの存在がナゾですからね。

 でも、6話のメインは片寄先生じゃなくてタイジくんの方。今回は悪バージョンのタイジ。なんでかなと思ったら、やっぱり片寄先生が好きなことが気に入らなかったみたい。亜子に無理やりキスしてたけど、怒って逃げた後にすぐに我に帰るあたり、また自身でコントロールできないのかな。
 すぐに謝ってきたタイジくんに安心した亜子だけど、そんなときに片寄先生が現れて、せっかくあきらめようとしていた亜子の心が再び揺れる。片寄先生とタイジに挟まれて、動揺の亜子。そんな時に、オッキー(沖野)が現れて、片寄先生のことは信じちゃだめとか、まるで先生のことよく知ってるみたいな口ぶり。こっちにも何かありそうです。



 [ 第7話 先生のヒミツ ]

 片寄先生はオッキーの中学の時のバスケのコーチということで、二人は前からの知り合い。先生と大会目指して頑張っていたけど、大事な試合の日に先生は現れなくて、その後理由聞いても先生ははぐらかすだけで、オッキーはそれが裏切りだと思って以来、片寄先生のこと信用してなくなってる、といういきさつがあったのでした。きっと理由があるんだろうけど、どっちにしてもオッキーにとっては信用してた人だからこそ裏切りというそれくらいの気持ちが強いんだと思います。先生は冷たい人じゃないという亜子の理由が「私が好きになった人だから。」というのは違うようだけど、それくらい先生のこと好きなんだなって伝わります。
 オッキーとのその話の流れで、先生が結婚してるとかいう話になるけれど、オッキーは先生が結婚してるなんて知らないようだし、担任クラスの克巳も同じくで、先生の結婚自体がナゾ? 先生マジで結婚してたら亜子の恋どうなっちゃうんでしょうか。



 [ 第8話 尽くす女はキライです ]

 意外と先生が結婚の事実を早い段階で打ち明けてくれました。片寄クン二十歳の時に結婚したそうですが、いろいろあって奥さんは今はもう自分のところにはいないとか、潤くんとも一緒に住んでないとかで、やはりワケありっぽいです。でも、今は奥さんが自分のところにいないという意味はどんなことを言っているのかはわかりませんが、先生生徒モノとしては、先生がワケありなことで亜子にもまだチャンスがあるわけですよね。片寄先生が既婚者だったとは… それだけでも衝撃ですけど。

 部室に閉じ込められて、寒い中亜子のそばにいてくれた片寄先生が風邪をひいて寝込んでしまいました。お見舞いに行って看病する亜子。亜子の最初の登場がギャルだったので先生を看病だとかいうのが想像し難いことだったのでちょっとびっくりなんだけど、一度ダメでもまた押し掛けるところとかフツーの女の子でかわいいです。
 亜子の看病で目を覚ました先生。看病疲れか眠ってる亜子に何かしようとした…?先生、風邪のせいで意識が朦朧としているのか、それとも別な理由か… 結婚のことを話したことで、亜子ははじめて先生にフラれたカタチとなってるけど、なぜか目が離せない亜子と片寄先生です。



 [ 第9話 ショート寸前 ]

 みさきも片寄先生のこと好きだったということですが、先生から絶対生徒とは付き合わないと言われたそうで、今朝亜子が先生の家から出てくるところを見てしまった時の嫉妬が絡んで少しイジワルな意味もあったのかなって思います。

 亜子が先生看病したまま寝ちゃって、先生がお礼してくれると言って、一緒にお昼ご飯を食べれるというよくあることでも喜びを感じる亜子がかわいいなぁ。
 先生はクラスの用事でお昼来ないとわかってたのにずっと待っていたのも健気。ギリギリで現れた片寄先生に、平気なフリしてたけど見破られて本音が出てしまったのもまた、先生に迷惑かけたくない亜子の気持ちもあって、片寄クンラブは止まりません。


 3巻  1999年12月14日 発売

 [ 第10話 片寄ビジョン ]

 夏合宿参加のため、期末試験に全力を尽くす亜子。試験の成績が悪いと補習参加のため、合宿にはでられないということで、亜子は無理してでも頑張る。必死に試験勉強する亜子を見た片寄先生が、部活を早く切り上げて試験勉強時間をくれたり、試験中具合が悪い亜子の様子を察してくれたり、赤点採っても合宿に連れてってくれるとか、亜子のことちょっとは贔屓にしてくれる。だけど、それでもやっぱり恋愛となると話は別で、自分はやめろとか亜子を遠ざける。亜子は片寄先生から相手にされてないわけじゃないけど、一線は引かれてるところはある感じもします。

 でも、具合悪い亜子を持ち上げて、そのまま担いでいった片寄クンがかっこよかったぁ〜。先生でもフツーあんなことできないよねー。せめて声かけるとかさ。そう思うと、ずっと亜子のこと気にしてくれてた片寄先生にとって、亜子は少しは特別になってるのかなぁ?片寄先生に担がれてドキドキする亜子はもっともだけど、カッコイイ男の先生に持ちあげられたら相手がだれであってもドキドキしそうです。



 [ 第11話 キスの事情 ]

 担いで保健室に連れていった片寄先生がムードに流されて(?)亜子とキスしちゃいました。その後の片寄クンはそっけない態度だけど、本当はすごく気にしてて、亜子もまた子供だと思われないようにキスのことはなかったことにしようとする。だけど、本当は謝ろうとしてたいた先生から「忘れる。」と言われて、寂しさから本当はうれしかった白状。いつもだったら先生はそこで否定するんだろうけど、亜子の気持ちを受け止めた。「お前といると調子狂う…」と。こりゃ急展開になりますかな。このセリフって亜子のこと好きだと半分認めたようなもんだと思いますが。

 そこでジャマをするのはやっぱりタイジ。部室でキス事情の話をしていた亜子と先生の会話を偶然聞いてしまい、片寄クンにバスケで勝負を挑んでくる。そこで片寄先生はタイジの亜子に対する気持ちを知る。「オレに亜子さん譲ってよ。」と先生に迫り、やっぱりライバルとなるのはタイジのようですね。



 [ 第12話 先生のキモチ ]

 タイジと亜子をめぐっての闘争があってから、片寄先生の態度がおかしくて不安になる亜子。私は、てっきり片寄先生は亜子のことが好きなタイジの気持ちでも考えたのかなと思ってたら、先生は口ではやっぱりそういったんだけど、亜子がタイジとキスしてしまったということに怒って、つまり嫉妬して嫌で機嫌が悪かったってことで、片寄先生亜子に堕ちましたねー。ラストのキスシーンが事実を決定づけているのでは。

 やっぱりタイジはキレた自分をコントロールできていなくて、片寄先生と言い争ったことも記憶になく、亜子が駆け付けると正気に戻る。自身でコントロールできるようになったら、どんなことをしても亜子を手に入れそうでコワイもんです…



 [ 第13話 青天のヘキレキ ]

 先生と気持ちが通じ合って、幸せをかみしめる亜子がかわいい。合宿中、抜け出して二人で夜空を見上げてキスしたり、手をつないで歩いたり、まだ気持ちが通じ合ったばかりなので中睦まじい姿を見ても片寄先生は本当に亜子のことが好きなんだろうか…と違和感を覚えないこともないんだけど、タイジに亜子を譲らない気になったという言葉が先生の前向きな気持ちで、とりあえず今は亜子のこと好きになっているんだろうなとも思います。
 でも、幸せは長くは続かないのが漫画ってもんで、合宿所に他の学校の部活もやってくるんだけど、その引率者がなんと、片寄先生の奥さん!!ひゃ〜〜〜\(◎o◎)/! 奥さんはいないと安心して幸せだったところにまさかの落とし穴!まさに青天の霹靂。まぁ、予想できる登場人物ではあったけれど、今頃(合宿中)出てくるとは。



 [ 第14話 燿子登場 ]

 いや〜、面白いことになってきましたねー。片寄先生の妻を名乗る女性・燿子。夫婦別姓にしているとかで職場では佐沙木燿子と言ってるそうですが、本名は片寄燿子と言ってましたので、やはり先生の奥さんということか。ただ、片寄先生がそれを隠していたこと、合宿所での先生と燿子との険悪そうな会話、それに前に言っていた「奥さんは今はいない。」というはなし。はたして、燿子という女性と先生との間柄とは何なのか、今後の展開にも関わってきそうです。
 亜子は先生の言葉を信じて昔のことと考えてるし、数年前から先生のことを知るオッキーも燿子さんや潤くんの存在は寝耳に水状態なので、わけはあると思いますが、たしかに先生は今はいないといっていただけで、いたという事実は消えないことで“いない”であって“別れた”とは言ってないので、まるっきり燿子の存在がウソでもないのかなと思います。

 亜子は先生が「燿子」と下の名前で呼んることが気になるし、先生が好きだと言う亜子の気持ちを察して隠そうとするタイジ、だけど亜子が好き、そして、一緒にいたオッキーがタイジの亜子への気持ちを知り、いろんな人物がいろんな角度から相手の気持ちを知ったり、物語に少しずつでも絡んでくる。キャラクターの動かし方がうまいもんですね。


 4巻  2000年6月26日 発売

 [ 第15話 先生といたら何でもできるのに先生がいないと何もできない ]

 亜子が片寄先生のことを好きだと知って、亜子にイジワルをする燿子。先生の結婚指輪をみせて妻だと宣言。妻VS生徒のバトルにそりゃ〜燿子さんの方が有利だろうけど、亜子は先生のいうことだけを信じると言って、意外と強気です。本当は動揺しまくってるんだろうけど、先生が好きで信じてるから言えたのかも。しかも、結婚してても関係ないって、それは先生と燿子との関係が円満じゃないからかな。亜子は長期戦覚悟?
 燿子さんも妻としての意地なのか、亜子にいろいろいって先生から遠ざけようとするけど、やっぱり亜子は先生だけを信じる。やっと話せたと思ったら、先生からは「もううざったい。」と言われ、保健室で涙を流す。先生、燿子さんから学校にバレたらどうなるかと脅かされてなのか、本心で言ったかどうかは別としても、最後に泣いてる亜子を陰で気にしてるところをみると、やはりウソ?

 先生が結婚してるとわかり、タイジが悪バージョンになって片寄先生を殴ってしまいます。タイジがキレるのは亜子と片寄先生が絡んでるときばっかですね。それくらい亜子が好きで、先生が許せないだろうな。今回のタイジのキレぶりは相当で、亜子にも愛想を尽かした感じで、本気で怒ってますね。それでも亜子は先生ひとすじなうえにタイジを責めるもんだから、亜子とタイジの関係もぎくしゃくしてしまい、亜子、片寄先生、タイジの三角関係も複雑になってきました。おまけに、タイジは先生を殴るという暴力沙汰を起こし、自宅に強制送還。三角関係の前にタイジ自身がリタイアしそうな勢い!?



 [ 第16話 うそつき ]

 先生のことあきらめようと思って、顔合わせるのつらくて、部活サボって再び合コンの亜子。こういう失恋で部活をサボるという行動は、本当は吹っ切れていないとわかってると見ていて本当に痛々しいです。案の定、亜子は先生のことふっきれてなくて、街でいじめられている潤くんを助けて、その時に先生の過去を知り、先生のこと気にするところなんて先生への気持ちがまだありありなのがよくわかります。
 しかも一緒にいたオッキーもまた中学の時に好きだったみさきにフラれているという過去があり、失恋の痛手はそう簡単に癒えるもんじゃないということに共感して妙な友情めいたものが生まれてます。(笑) 亜子とオッキーが意気投合すると意外と相性よかったりするんじゃないでしょうか。

 潤くんの口から語られた先生の生い立ち。中学の時に両親が亡くなって、燿子の両親にお世話になってた。だから、燿子の父がお父さん代わりみたいなもんで、先生は義父に頭があがらない。ということは、燿子だけではなく、燿子の家族とも昔から知ってたってことになるわけか。おまけに、先生はひとりにはもう慣れてるから寂しくないって。親代わりがいて所帯も持ってる人間がさみしいこというのは、やはり家族では満たされていない何かがあると考えれば、片寄先生の結婚生活がますます疑問になってきます。



 [ 第17話 燿子の逆襲 ]

 タイトルだけでもコワイ… 燿子さんが研修で亜子たちのいる学校へ。逆襲なんで、当然学校に現れればイジワルするのは目に目えてますが、燿子は卑怯な手を使ったり小細工したりして亜子をだますというよりも、すでに持ってる妻という武器を使ってとことん亜子を口撃する。いくらどんな夫婦関係でも結婚してる燿子が立場上有利であって、それをわからせるような嫌味な言葉を列挙すれば亜子が精神的にダメージを受けるのは当然。
 だけど燿子に絡まれてるところを助けてくれた片寄先生。亜子にもうやめようといっておきながら「特別な女」と燿子に告げる。これは亜子を助けるために言ったのか、それとも本心なのか。でも、「泣かせていいのはオレだけだ。」というのはいいのだろうか… いくら特別な人でも泣かせては困るよ片寄クン。(汗) 泣かせる前に幸せにしてあげなきゃ。(笑)

 タイジに悪い噂が流れ始めてますが、そういえばタイジくんもいましたね。(笑) 合宿で強制送還されてから出てなくて忘れるところだった… タイジはどこで何してるんでしょうか。



 [ 第18話 迷子の気持ち ]

 片寄先生、亜子のことふっておきながら助けたりするけれど、先生の本心は亜子に好きという気持ちがまだ残ってるとみていいでしょう。それを代弁してくれたのがオッキー。亜子がタイジの家にお見舞いに行くことに嫉妬して、大人げないようなセリフを吐く。オッキーは片寄先生の本音がわかる。タイジのところに行かせたくないという気持ちが。
 だけど、亜子の認識と先生の気持ちはすれ違ってる。亜子は先生に嫌われてないとわかっても自分を一生徒として“かばってくれる”と思ってる。子供だと思われないように、先生が自分を好きなはずがないと言い聞かせてるだけかもしれませんが。けど、先生は亜子を突き放しておきながらも“好き”という本心を口にしてる。そして、片寄先生の亜子に対する気持ちをジャマするのは燿子の存在。彼女が先生のココロをコントロールし、亜子とくっつけないようにする。それでも先生はその気持ちから背こうとするので気持ちが絡まって二人の距離が縮まないんですよね。先生の妻という存在が予想以上に物語を左右させています。

 そして、久々に登場のタイジくん。悪タイジがグレードアップ!! 昔の人懐っこいカワイイ顔したタイジくんはもういないって感じ。おまけに街で亜子と遇っても「こんな女知らない。」と、亜子への気持ちもどこかへいってしまったんでしょうか…


 5巻  2000年9月26日 発売

 [ 第19話 サトウ タイジ ]

 悪がグレードアップしたタイジがやっと登校してきました。だけど、やはりそれまでの優しいタイジとは違って、明らかに風貌が悪くなってます。亜子に接する時のタイジは優しかったから、亜子を突き飛ばした時はちょっとショック…
 部室で亜子と二人きりになった時、亜子を襲うタイジ。亜子の気持ちを無視して、嫌がるのを無理やりキスして、タイジの中で何かが壊れちゃってる… 亜子のこといらないとか知らないとか冷たく突き放したのは自分の思うようにいかなくて腹が立ったりとかしたんだと思う。でも、やっぱりタイジは亜子のことが好きだから、こうやって手を出したくなるしで、タイジが何を考えているのか、何をしたいのかよくわかんないです。

 そして、甘くなかったのが燿子さん。部室にタイジと亜子がいるのを知って、物音がすると他の先生を呼び出して、二人でいるところを片寄先生にも見せるという、本来の悪質な役割がとうとう出ました。やはり敵役はこうでないと面白くありませんねー。燿子のトゲのある言葉や行動にどんどん追い詰められていく亜子。かわいそうで見てられません。(涙)



 [ 第20話 迷子の気持ち2 ]

 燿子にハメられて二人でいるところが見つかってしまい、亜子とタイジが部室でやっていたと学校中大騒ぎ。二人は正座させられるんだけど、見つかっても亜子の気持ちなんか無視したたのに、他の先生に亜子は関係ないから許してほしいというこれがタイジの亜子への本当の気持ちだと思います。亜子の方も自分を助けようとしてくれたのに自分も一緒に反省するというのは、かばってくれたタイジが本来の優しいタイジだとわかったことでもあると思う。やっといつもの亜子とタイジの関係になったと思ったら、亜子ってば「タイジくんが亜子さんって呼んでくれたの久しぶり。」とか言うもんだから、タイジが動揺しちゃう。亜子ちゃん、本当に男性の気持ちがわかってない。(笑) そうやって優しくしてくれるから嫌いになれないし、片寄先生だって困ってしまうんですよね。
 二人で正座していたけれど、先生と燿子が一緒にいるのを見るのが辛く、タイジに言われるがままに一緒に学校を抜け出してしまいますが、これではまた騒ぎが大きくなる。せっかく片寄先生が電話してきてくれたのに切っちゃうしで、迷走の亜子。しかも、燿子がわざとらしく男子バスケ部員に片寄先生と結婚してることをバラしてしまい、亜子が先生を追いかけまわして迷惑してるだとかまるで亜子を悪者みたいに言って、ますます亜子の立場は悪くなるばかりで、燿子のイジワルぶりは思った以上に長く、ハラハラどきどきな展開が続きます。

 片寄先生は、亜子のこと振っておいても、部室でタイジといるところを見て以来イライラなのか、授業にも影響しちゃうし、必死に亜子とタイジを探すしで、先生の嫉妬とか亜子への気持ちがあることがよくわかる行動になってます。



 [ 第21話 リタイア ]

 燿子が片寄先生と結婚してることをばらしてしまってから、亜子が先生に手を出そうとしてるとかいう悪評があっという間に広がってしまいました。だけど、燿子のやりたい放題に片寄先生がついにキレた〜。今まで好きにしろ的な態度だったけど、片寄クンやっとだよ。
 今回の騒動がこれ以上大きくならないようにと、タイジと亜子が学校抜け出して大騒ぎのところを先生が謝ってくれて。だけど、電話で亜子のことを特別な大事な生徒だと、亜子が自分をあきらめるようにウソついたりで、本当の気持ちは決まってるだろうにはっきりしないところが歯痒い。

 亜子は先生にハッキリとフラれたカタチとなり、今度は本当につらくなったのか、「先生のこと好きなのもう疲れた…」とタイジの前で泣いてしまい、亜子の気持ちが限界にまできてる感じ。タイトルにもあるように、亜子が先生への気持ちにリタイア寸前で、タイジがチャンス!?



 [ 第22話 L.O.T (LOVE or TRUTH) ]

 先生のこと本当はまだ好きでたまらないのに、先生のことあきらめると告げる亜子に切なくなりました。先生だって亜子のこと本当は好きなのに、タイジとのこと応援してるとかウソついて、本当はもう両想いになってもいいのになれないのが読んでいて悲しいです。

 いつまでも煮え切らない片寄先生の心を動かしたのは潤。亜子のことウソついて泣かせて突き放して落ち込んでいることろへ、ウソつくと心に傷ができて心が苦しく痛くなると説き、やっとどうしたらいいのか答えが見えたようです。やはりこういう時に子供の素直で純粋なこころというのは武器になるもんですね。子供には勝てません。
 潤くんのおかげでやっと、やっと片寄先生の決心がついたようです。前回燿子にキレたあたりから株を少し上げましたが、ここにきってやっと(私の中で上だった)タイジに追いついた感じです。燿子の実家での宴席で「円満夫婦のふりはもうできない。」と言い残しいなくなってしまったと思ったら、なんと亜子ちゃん家にやってきて、「好きだって言いに来た。」と。ホント、やっとですね。やっと先生の態度がはっきりしましたよ〜。でもね、そんな時にタイジが亜子の部屋へやってきて、さぁ、どうなるってところで5巻終了なんだけど、次巻で最終巻ということで、タイジがどうなるかです。


 6巻  2000年12月20日 発売

 [ 第23話 L.O.T (LOVE or TRUTH)2 ]

 片寄先生と燿子の結婚の真実がついに語られました。燿子はいろいろあって結婚できない人の子供を妊娠してましい、お世話になっていた燿子の母親に燿子と結婚してくれと泣きつかれた。先生は引きうけるフリをして式の当日すっぽかしてしまったという。おまけに先生は両親を亡くして、父親と仲が良かった遠縁の燿子の家でお世話になっていたけど、だんどん目ざわりにされて…という先生にはさみしい過去があり、ひとりでいることに慣れているというのもこれが背景にあったんだと思います。
 燿子と結婚したのも先生の意思ではなく仕方なくさせられたというだけで、兄妹のように育った燿子のことは結婚対象とかそういう気持ちはなかったんだろうと思います。だから、「円満夫婦のふり」とか、会っても険悪な感じで、仮面夫婦みたいなもんですね。しかも、片寄先生燿子たちとは別居しててひとりでマンションに住んでますから、決定的かと思います。
 これで片寄先生の謎だらけの結婚の実態が明らかとなりすっきりしました。もともと先生は結婚してても気持ちはひとり身みたいもんですから、先生に本当にそういう相手が現れればこの先どうなってもおかしくない展開です。そして、出会った亜子。亜子の家にやってきて、タイジの言うことも聞かず連れて行ってしまいました。結婚してるのは事実ですから不倫であるという事実は変わらないわけだけど、「それがどうした。」とはっきり反論。片寄先生の意志は固そうです。最終巻なので、先生が亜子側に堕ちればいっきにどんでん返しの展開となるかな。



 [ 第24話 恋のゆくえ ]

 片寄クンとうとう腹をくくり、亜子のこと傷つけないと約束してくれて、最終巻にしてカッコよくなりました。先生がいままで煮え切らない態度だったのは、教師だから当然というのもあるんだろうけど、それ以前に既婚者ですから他の女性と恋愛しては不倫になるので、他の先生と比べればそうなっても仕方のないことだと思います。
 ここまでくればあとは亜子との恋の行方がどうなっていくかだけどと思いますが、最終回目前なのに燿子さんまだまだ絡んできます。最後まで燿子の悪役ぶりで楽しませてくれます。燿子が先生と亜子とのことを学校側にばらしてしまい、片寄先生転任の危機?

 タイジは無事に部活に戻ってきましたが、亜子にはフラれた結果となったわけで会っても話ができず。タイジくんちょっとかわいそうだったな。オッキーと亜子はけっこう仲良しな感じになってよかったけれど、みさきへの思いは完全にふっきれたのか気になるところです。(笑)



 [ 最終話 だいすき ]

 最終巻になって片寄クンがどんどんかっこよくなってる。離婚届まで持ってくるとなればもう先生に迷いはなし。亜子を守るため自分で学校を辞めて、それまでの自分の人生より亜子を選んだ。それまでの生活すべてを犠牲にして好きな人を取るなんて、なんてステキなの!いかにも漫画の世界のヒーローだけれどカッコよすぎる。こういう人に想われたら幸せですね。亜子を選んだということは、燿子の家と決別しなければならないわけで、潤くんにも会えない覚悟だけれど、もともと血のつながりはないわけだし、何かを選べば犠牲はつきもの。今回は家族というちょっと重たいものだけど、それがハッピーエンドで残る不自然さはないので良いです。
 先生は学校を辞めて予備校で講師をしながらで、1年かけてやっと燿子との離婚が成立。先生、バツイチになってしまったけれど、これで亜子と問題なく付き合えるし、今はバツイチくらいの方が魅力あってもてますからね。先生と亜子が晴れて付き合えるようになってよかったです。

 気まずかったタイジとの関係もなんとかもとに戻ってよかったけれど、亜子が先生と付き合ってると実感すればやはり少しはショックなところがかわいそうな気も… 「もう女は好きになんねー(涙)」、それほど亜子のこと想ってたんだね。ますます克巳と仲良しに。(笑) がんばれタイジ。

 最終話の扉絵、亜子と先生の笑顔のツーショットが幸せそうでいいですね。とくに亜子のスマイルは今まで本編でもみたことのないような顔でかわいいです。幸せっていいですね。☆